第十四話 能天その十一
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「神が出て来ては次々と消えまた新しい神が出て来る。そうした読み解くだけでも困難な世界でなくともだ」
「他の神話か」
「ゼウスを見よ」
彼が話に出してきたのはオーソドックスと言えるものであった。ギリシア神話のゼウスだった。確かに彼は非常によく知られた神である。
「父を倒し天空の神になったな」
「うむ」
「かつては信仰されていなかった」
これは事実でるらしい。彼は父であるクロノスを倒しそのうえで天空の神となったのだがこれはかつてはクロノスとその神族であるティターン神族が崇拝されていたことの証でもある。そのクロノスにしろ父であるウラノスを倒して神々の王になったのであるが。
「しかし時代が変わり信仰されるようになりその力も変えていった」
「天空と雷だけでなく全知全能の神にか」
「そうなったのは何故か」
死神は言うのだった。
「それは彼が進化したからだ」
「だからか」
「そうだ。これはどの神も同じだ」
こう牧村に話すのだった。
「時代により変わり、そして進化するのだ」
「それは貴様もだというのだな」
「如何にも」
ここまで話したうえで牧村に対して頷いてみせた。
「その通りだ。私もまた進化する」
「他の神々と同じくだな」
「これでわかったな。そして私がどのようにして進化するか」
「どのようにしてだ?」
「命を刈り取り冥府に送ることによってだ」
つまり彼の責務を果たすということであった。
「それによってだ。私は進化する」
「それによってか」
「わかったな。貴様の様に鍛える必要はない」
そのことはここでも否定した。
「しかし。命を刈り取りその命を冥府に送ることにより」
「貴様は進化していく」
「わかったな。そういうことだ」
牧村に対して話し終えた。
「私も。他の神々もまた進化し変わっていく。貴様等人間と同じくな」
「そして俺もか」
「貴様も?」
「そうだ。俺は髑髏天使だ」
覆せない絶対の真実である。
「髑髏天使もまた」
「そうだったな」
死神は彼のその言葉で気付いたのだった。
「その通りだ。貴様もまた闘いの中で進化していっている」
「今は能天使だ」
己の今の位置もわかっているのだった。
「だが。さらに闘いを経れば」
「さらに進化する」
死神もそれは認める。
「だが」
「だが?」
「いや、まだそれはわからないか」
彼はここから先は言わなかった。
「まだな」
「何か言いたいことがあるのか?」
「それはない。気にするな」
「気にするなと言われて気にしない人間はいないが」
「忘れろ。それよりもだ」
彼は牧村に対して告げてからそのうえでまた彼に言うのだった。
「次の魔物との闘いだが」
「それがどうしたというのだ?」
「ダムに行け」
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