第十四話 能天その四
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「ですからそれで」
「そうね。闘いを進めていけばね」
「おのずとこちらもやるべきことがわかってくる」
「そうです。そして」
老人はここで話を少し変えてきた。
「今回のことですが」
「私に任せてもらうわ」
女が名乗り出て来た。
「ここはね」
「貴女がですか」
「ええ。けれど一人よ」
「一人か」
男は女が出すのは一人と聞いて声をあげてきた。
「髑髏天使はそれでいいだろうが」
「死神のことを言いたいのね」
「そうだ。今はあの男もいる」
その死神のこともあった。今彼等の相手は髑髏天使だけではなくなっていたのだ。このことを忘れることは決してなかった。忘れられる筈がなかった。
「一人だけというのはだ」
「安心していいわ。死神のことも考えているわ」
女は男の問いに対して余裕の笑みで応えたのだった。
「それはもう充分にね」
「考えているというのか」
「身体が一つだから問題なのよ」
「はい、そうです」
老人は女の今の言葉に対して頷いてみせた。
「一つだからです。確かに」
「けれど一つではなかったら」
こう言って笑うのだった。
「そういうことよ。それじゃあ」
「それでは。今は任せた」
男はここは女に任せることにしたのだった。
「だが。俺もまたな」
「配下の魔物はもう用意してあるのね」
「無論だ。だが今度は趣向を変えてきた」
「趣向を変えてきたというの?」
「水だ」
水だと言うのだった。
「水の中に用意しておいた」
「そうなの。水なの」
「一応そちらも出しておいていいか」
「私の方の邪魔をするというの?」
女は今の男の言葉に眉を少し動かした。そこには幾分警戒するものもあった。
「若しそうならその時は」
「案ずるな。俺はそうした無粋な真似はしない」
男もそれは否定するのだった。
「だが。若し水での闘いになったならばだ」
「その時はわからないというのね」
「陸では思う存分闘うといい」
そちらは女に完全に任せるというのだった。この言葉に偽りは見られなかった。それは女だけでなく傍らにいる老人にもわかったことだった。
「貴様が今度出す魔物は水で闘えるか?」
「いえ」
男の今の問いには首を横に振って答えたのだった。
「残念だけれど。それはないわ」
「では好都合だ。俺は今回はトラップと考えておいてくれ」
「そう。トラップなのね」
「貴様は貴様の闘いをすればいい。俺はトラップだけ用意しておく」
こう言って闘いには積極的に関わらないというのだった。
「それだけだ。それではな」
「ええ。ここで二人の仲間が戻って来るのならさらに楽しくなるし」
「そうですね。三人より五人です」
老人も女のその言葉に対して微笑んでみせた。
「また。楽しくなりそうですね
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