第十三話 衝突その十六
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炎はうわんをも包み込む。しかしだった。
「そうすることも考えていた」
「考えていただと?」
「そうだ。貴様が空を飛ぶことができる」
言うのはこのことだった。
「それはな。わかっていた」
「わかっていたというのか」
「だからだ。その時はだ」
うわんは跳んだ。信じられない程の跳躍で彼に迫ってきた。
「こうするつもりだ」
「むっ!?」
「貴様は飛べる」
うわんは上に向かって跳びながら己の上にいる髑髏天使に対して言ってきた。
「しかしだ。俺は跳べるのだ」
「跳べるというのか」
「空を飛んだだけでは上には立てない」
彼はこうも言う。
「それは貴様自身もわかっている筈だ」
「確かにな」
それは髑髏天使も自覚していることだった。彼はこれまでの闘いで空を舞う相手とも闘ってきた。それもまだ大天使の翼がない時にもだ。その時のことは今でも覚えていた。
「それはその通りだ」
「あらば。そうした場合の闘い方もわかっている筈だ」
うわんは既に拳を繰り出そうとしていた。
「こうしてな。貴様を倒す」
その動きの速さは相変わらずだった。まさに光速だ。しかしであった。髑髏天使はそれを見ても平気だった。至って冷静な様子を崩してはいない。
「しかし。冷静だな」
「闘いで己を見失ったその時が終わりだ」
これが髑髏天使の返事だった。
「それでな」
「覚悟を決めたわけではないのか」
「覚悟は決めてはいない」
彼もそれは否定する。
「しかしだ」
「しかし?」
「勝利は確信している」
こう言うのだった。
「勝利をだと!?」
「そうだ。これだ」
言いながら右手の剣を前に突き出してきたのだった。
「攻撃はただ繰り出すだけではない」
「何っ!?」
「敵を誘い出しそのうえで仕掛ける場合もある」
「それが今だというのか」
「跳べばそれに力点を集中させてしまう」
彼は言うのだった。
「一旦向けた点はそこから変えることはできない。つまり攻撃ポイントが決められる」
冷静沈着な言葉が続けられる。今まさにうわんの拳が迫ろうというその中で。
「だからだ。俺はただこうする」
言いながらその突き出した剣に炎を宿したのだった。そしてその炎を。
思いきり放った。紅蓮の炎が渦となって放たれそれをうわんに放つのだった。ただ直線に突き進むだけのうわんにそれをかわすことができなかった。
「ぐうっ・・・・・・」
「こういうことだ」
炎はそのままうわんを包み込む。髑髏天使はそれを見つつ呟いた。
「貴様が跳んだ時既に勝負は決まっていた」
「そういうことだったのか」
「そうだ。そして言ったな」
うわんは炎に包まれながらも何とか着地した。しかしその着地した場所も紅蓮の中にある。彼はその中で漆黒の身体を炎
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