第十三話 衝突その九
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「妖怪というものは」
「だってねえ。僕達日本の妖怪だよ」
「日本人の永遠の友達だよ」
彼等は茶道をやり和菓子を食べながら笑顔で彼に応えてきた。
「いつも一緒にいるんだよ、何処でもね」
「気付いてくれている人は最近少なくなってそれが寂しいけれど」
「俺も気付いたのは最近だがな」
牧村にしろそれは同じであった。
「妖怪が本当にいるということもな」
「案外わかりませんよね」
またろく子が笑顔で首を伸ばしてその首を彼の周りを螺旋状に囲みながら声をかけてきた。その首は牧村の顔のすぐ前にある。
「妖怪がいつも側にいるなんて」
「ああ。そうだな」
またろく子の言葉に頷く牧村だった。
「言われてみないとな。本当にな」
「わしが気付いたのは学者になってからだったかのう」
そして博士も己の記憶を辿りながら述べてきた。
「いや、子供の頃じゃったか?」
「博士、まだそこまでぼける歳じゃないでしょ」
「たった百年しか生きてないのに」
またひょうすべや一本だたらが笑いながら博士に言ってきた。
「まだまだこれからなのに」
「そうそう。百歳が妖怪生の暁だよ」
彼等にしてみればそうらしい。少なくとも何百年も生きているのは間違いない。
「楽しいな楽しいなってね」
「お化けは死なない」
また随分と懐かしい歌も知っていた。
「試験も何にもないってね」
「それはいいけれどそこでお茶を飲むのは」
「いいじゃない。お酒も飲むし」
「茶道だけ駄目ってことはないじゃない」
少し苦い言葉を出して苦言してきたろく子に対してひょうすべ達は返した。
「茶道は堅苦しくしたら駄目だよ」
「リラックスリラックスでね」
「それにしてもいつも随分とくつろいでいるな」
ろく子は彼等の言葉にふてくされたような、さらに怒ったような顔になったが牧村はこう言うのだった。
「妖怪というものは」
「だってねえ。学校も試験も何にもないし」
「人間の世界の法律もないし」
彼等は牧村にはこう返してきた。
「それに明るく楽しくが妖怪の世界の決まりだから」
「僕達それに従ってるだけだよ」
「明るく楽しくか」
「妖怪の明るく楽しくじゃよ」
博士がまた牧村に言ってきたのだった。
「人間は人間での。明るく楽しくな」
「そうしていけばいいか」
「わしもそうしておるよ」
またしても顔を崩して笑う。
「いつものう。家ではかみさんもおるし」
「博士の奥さんも可愛い人だよね」
「若いし」
「ふぉふぉふぉ」
白い顎鬚をしごきながら笑う。まんざらではないようである。
「奥さんもやっともうすぐ百歳だし」
「若いよね、本当に」
「若いのか」
この言葉はやはりまだ牧村にとっては違和感のあるものだった。
「妖怪の中では」
「全
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ