第十三話 衝突その八
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「それでじゃ。たまたまこの娘に出会ってのう」
「たまたまか」
「妖怪について研究していると妖怪達が寄ってきてのう」
「研究していると寄って来るものなのか」
博士の今の話にまた怪訝な顔になった。
「妖怪というものは」
「僕達を好きな人にね」
「集まるんだよ」
彼等は笑顔で牧村に話をしてきた。
「それが妖怪だからね」
「だからだよ」
「それでなのか」
とりあえず彼等の話を聞いて納得はした。
「それで博士のところにか」
「それででした」
ろく子がまた彼に話す。
「博士に御会いしまして」
「それで秘書になり、か」
「はい。人間の世界の料理にやっと興味を持ちはじめまして」
やっと、と自分で言うのだった。
「それで今です」
「思えば長い時間だったな」
「そうですね。けれど作りはじめて五十年」
一言で済むがその歳月もかなりのものだ。
「それで今に至ります」
「今のコーヒーは五十年の年季があるのか」
「こちらはそれ程ではないです」
こう牧村に話してきた。
「実は。この二年か三年ですね」
「案外短いのだな」
「コーヒーよりお茶に凝っていました」
「実は」
「お茶か」
「お茶は昔から好きでした」
また笑顔で答えるろく子だった。
「それでそっちは前から」
「お茶もいい」
牧村はそちらもいいというのだった。
「飲んでいると落ち着く」
「そうですよね。味もいいし」
ろく子の顔はさらににこにことしたものになっていた。
「ですから好きなのですよ」
「ああ。今度はそれも飲ませてもらう」
牧村はにこりとはしていなかったが言葉は機嫌のよさを感じさせるものだった。
「お茶もな」
「どんなお茶がいいですか?」
「緑茶か」
彼がここで欲したのはそれであった。
「それをもらう。今度な」
「いいですね。私緑茶には特に凝っていまして」
「そちらにか」
「はい。といってもこの研究室で茶道はちょっとできませんけれど」
「そうなの?」
「初耳だよ」
彼女の今の言葉に他の妖怪達が驚きの声をあげる。見ればひょうすべや一本だたらといった面々が床に敷き物を敷いてそこで茶道を行っていた。
「僕達普通にやってるよね」
「ねえ」
彼等は顔を見合わせて言い合う。
「お茶は何処でも飲めるし」
「太閤様なんか物凄い振舞ってくれたよね」
「太閤様・・・・・・あれか」
牧村でなくともこの官職だけでわかった。
「豊臣秀吉か」
「あの人凄い気前よかったからね」
「権現さんはけちだったけれどね」
今度は家康のことが話に出て来た。
「それでもいい政治してくれたから助かったけれどね」
「僕達もね」
「茶道だけでなくその時から人間の世界に入っていたのか」
牧村はあらためてそ
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