第十二話 大鎌その八
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「これでも大学生だからな」
「そういえばそうだったね」
「牧村さんもね」
妖怪達も忘れかけてしまっていることだった。彼等にとっては牧村は人間の世界における大学生ではなく髑髏天使なのだ。だからである。
「そしてその後はまたテニスとフェシングじゃ」
「ランニングも続けているようじゃな」
「それと筋トレも毎日している」
博士の言葉に返した。
「しっかりとな」
「よいことじゃ。それがそのまま君の強さになるからのう」
「さらに上の天使にか」
「なれるやも知れぬ」
牧村の顔を見上げつつ述べた。
「さらにな」
「魔物を倒す為に必要ならばなってみせる」
牧村もそれに応えて言葉を返した。
「それならばな」
これが今のこの場での最後の言葉だった。彼は博士の研究室を後にした。そして建物も出て外に出るとそこにあの彼がいたのだった。
「御前は」
「この・・・・・・大学だったな」
死神は今は黒い、神父の法衣を思わせるゆったりとして長い服を着ていた。そのうえで牧村の前にいて一旦周囲を見回していた。
「八条大学だったか。日本の学び舎だな」
「それはその通りだ」
牧村は死神の今の言葉には素直に教えた。
「だが。どうしてここに」
「何度も言うがこちらからは仕掛けることはない」
死神は牧村の警戒する気配に気付いていた。
「それは安心しろ」
「では何故ここにいる」
「ここに魔物の気配が強く残っているからだ」
「魔物のか」
「この場所でも闘ったな」
死神は牧村に目を向けて問うてきた。
「そうだな」
「如何にも」
牧村は今度も素直に述べた。
「闘った。そして倒した」
「この気配はマニトーか」
彼は気配からそこまで読んでみせた。
「そうではないか?」
「確かそうした名前だったな」
これは牧村はあまり意識して覚えていたものではない。まずは倒すことを考えていつも動いているからだ。魔物の名前にはさして興味はないのが彼だった。
「蜘蛛の様な奴だった」
「ウェンティゴの配下だ」
死神はここで言った。
「あれはな」
「ウェンティゴ。魔神の一人か」
「そうだ。北米に古くから存在している氷の魔神だ」
死神はウェンティゴについての話もはじめた。
「その者も気配も残っているな」
「ここで会った」
牧村はこのこともそのまま述べた。
「闘うことはなかったがな」
「少なくとも魔神達は今は御前とは闘わない」
死神は静かに彼に告げた。
「今はな」
「俺がまだそこまでの強さにはなっていないからか」
「魔物は闘いを好む」
だからこそ魔物なのである。闘うことに興味がなければ妖怪となる。妖怪と魔物の違いはこれだけだがそれを隔てているそれは大きいものなのだった。
「しかも闘いがいのある闘い
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