第十二話 大鎌その四
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「ならやはり闘う必然性はないか」
「さて、それはどうかのう」
ところが彼はここで首を捻りその動作を牧村に見せるのだった。
「そこまではわからんぞ」
「敵になるというのか?」
「確かに魔物を倒すという目的は同じじゃ」
博士はそれは確かだと前置きした。
「それはな」
「しかしか」
「目的は同じでもそれでも味方とは限らん」
博士はまた言った。
「それはな」
「世の中は単純なものじゃない」
それがわからない牧村でもなかった。この程度の世界の理は彼もわきまえていた。
「目的は同じでもそこで衝突するものがあれば」
「その通りじゃ。あの死神は悪しき存在ではない」
「あくまで命を刈るだけか」
「死は必然じゃ」
この考えは東洋的な考えであった。だが真理でありこれから逃れられることができた者は少なくとも博士も牧村も知らないことである。
「じゃから。悪ではない」
「魔物を倒すのも必然」
「うむ」
牧村の言葉に対して頷いてみせた。
「しかしじゃ」
「その過程では何があるかわからないか」
「偶然はいい場合と悪い場合があるものじゃ」
博士はこうも言った。
「じゃからのう。普通にやっていれば闘うことはないのじゃがな」
「普通なら、か」
「しかし。そもそも髑髏天使は普通ではない」
「そうだな」
髑髏天使のことは彼が最もわかっていた。他ならぬその髑髏天使であるからだ。
「それはな」
「そして死神がこの世に出ることもな」
「普通ではないか」
「普通でない存在が出会う」
「それだけで何かがあるな」
「そう考えてよい。それでじゃ」
博士の言葉は続く。
「死神と闘った場合じゃが」
「どうなるというのだ?その場合は」
「危険じゃよ」
博士の言葉だけでなくその目にも剣呑なものが宿った。
「その場合はな。死神は強い」
「神だからか」
「神は何故神かというとじゃ」
「力があるからか」
「そういうことじゃ。人間を超越したその力」
「魔物の神と同じだな」
彼は今度は魔神達を話に出してきた。
「それは」
「その通りじゃよ。今の髑髏天使では魔神に勝てはせん」
厳然たる事実であった。まだ彼はそこまで至ってはいない、精々魔物を倒せる程度でしかない。そうした意味で髑髏天使もまた卑小な存在でしかなかった。
「決してな」
「そして死神にもか」
「うむ、勝てん」
また現実が語られる。
「だから。決して闘うな」
「向こうから来てもか」
「それでもじゃ」
また言う博士だった。
「よいな。それはな」
「一応は聞いておく」
だが今の博士の忠告に対して牧村の返答は随分とぶしつけでしかも誠意のないものだった。そしてそれを隠そうともしなかった。
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