第十二話 大鎌その三
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「あの死神はな」
「面白くなってきているのは確かね」
女はこれだけ言って妖しく微笑んでみせたのだった。
「一人より二人ね」
「さて、その二人ですが」
老人は笑みはそのままで言葉だけ変えてきた。
「果たしてどうなるでしょうか」
「争うのか?」
男は剣呑な目になり呟いた。
「天使と死神が」
「天使と死神ね」
女はそこに注目した。その二つの全く異なるとされているそれぞれの存在についてだ。
「相容れない存在同士ではあるわね」
「そうですね」
老人も女の言葉に同意して頷く。
「それは間違いありません」
「ええ。けれどどうなるか」
女の妖しい笑みは消えた。真剣な顔になっていた。
「それね」
「さて、どうなるか」
「それも見せてもらうとしましょう」
三人は人間の世界の店で人間の姿で話をする。しかしそこで話されているものは人間のそれではなく異なった存在のものであるのだった。
牧村は髑髏天使として見たものをそのまま博士に対して話した。その話される内容を聞いた博士はまずはその目を細く顰めさせそのうえで彼に対して言うのであった。その場はいつもと同じ彼の研究室であった。やはり周りには妖怪達がたむろしてそれぞれ何かをしていた。
「死神か」
「知っているか?」
「その死神もな」
「その死神だと!?」
「うむ」
学者というよりは宗教家の顔であった。その顔で目を顰めさせる牧村に対して答えた。
「そうじゃ」
「死神は何人でもいるのか」
「少なくとも一人ではないのは間違いない」
博士はまた牧村に答えた。
「何人でもおるのじゃよ」
「何人もか」
「例えばギリシア神話に出て来る死神じゃが」
「タナトスだったか」
牧村は己の中にあるその知識を辿って述べた。
「ギリシア神話だと」
「うむ。そうじゃ」
また牧村の言葉に頷いてみせた。
「ギリシア神話ではな。そうじゃ」
「タナトスとあの死神は違うのか」
「あの死神は冥府の神の一人」
「ハーデスの僕ではなくか」
「ハーデスはギリシア世界の冥府の神じゃがそちらの冥府の世界の神ではないのじゃよ」
「そうか」
牧村はこれで理解したのだった。あらかたであるが。
「様々な冥府のうちの一つの神か」
「世界は一つではないのじゃよ」
博士も牧村の言葉に続いて述べた。
「一つではな。幾つもある」
「複数の世界があるということだな」
「北欧神話でのユグドラシルには無数の葉があるのう」
今度の話は北欧神話に関するものになっていた。
「そしてその葉一つ一つが世界なのじゃよ」
「葉の一枚一枚がか」
「そういうことじゃ。世界はユグドラシルの葉の数だけある」
博士はまた言った。
「あの死神はその冥府の世界の一つにあるのじゃよ」
「成程
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