双葉時代・反省編<後編>
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私を呼んだ。
「ねぇ、一度だけでいいから……僕の事、名前で呼んでくれませんか?」
唐突にそんな事を求めて来た彼の目的が分からなくて、手を止める。
目の前にいるのはマダラの弟で、私の昔の患者。父と母を殺した仇で、一族の敵。
――――彼の名前は。
「イズナ、君?」
「あなたの敵として、対等な相手として……認められたかったんです。ずっと、前から……、僕も、にい、さ……」
……眠る様にイズナが瞳を閉ざす。
苦痛で強張っていた頬の筋肉が緩んで、安らいだ表情を浮かべる。
さっきまで、弱々しくも灯っていた命の灯火が目の前で掻き消えたのを感じた。
「……っあ」
嘆く資格なんて無い。そう思うのに、涙が零れ落ちるのを止められなかった。
嗚咽が漏れ出るのを、唇を噛んで必死に堪える。木遁の印を組んで、木製の棺でイズナの亡骸を中へと収めた。
いつからこんなに女々しくなったのだろう。本当に、情けない。
目元を乱暴に擦って、涙を拭う。
戦場に視線を巡らせ、他に人間が残っていないかを確かめる。どうやら私で最後の様だった。
重たくなった足を叱咤して、その場を離れる。
一族の集落に向かう途中で、背後の戦場から咆哮の様な嘆きの声が上がった様な気がした。
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