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木の葉芽吹きて大樹為す
双葉時代・反省編<後編>
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筈。

「……残念だなぁ。兄さんに目をあげちゃったから、あなたの顔を……よく、見れないや」
「馬鹿言うな! 目が見えないというのに、なんで戦場に出て来た!? 自殺する様なもんだぞ!!」

 義眼だからといって、視力が全くないと言う訳ではないだろう。
 だが、瞳力を誇るうちはの忍びがその根源たる写輪眼無しに戦場に出るなんて、ましてや千手を相手取るなんて無謀としか言えない。
 瀕死の重傷なのは間違いない。

 私としても、敵であったとしても顔見知りであるこの子を見殺しにするつもりは無かった。

 掌にチャクラを込める。
 緑色を帯びた両手が傷を癒そうとして効力を発揮するが、マダラとの戦いでチャクラを使い過ぎた様で、いつもの様に直ぐさま完治といかないのが歯がゆい。

 ――内心で舌打ちしていれば、弱々しい力で私の手が弾かれた。

「……やめて、くれますか。あなたのお気遣いは嬉しいのですが、僕にも誇りはある」
「うちはだからか? そんなの関係ない! オレが助けたいから助ける、文句あるか!?」
「……はい」

 虫の息だと言うのに、その声はやけに重々しく私の耳に届いた。
 信じられない気持ちで、弟君を見やる。この子とも、私は戦場で刃を交えた事はある。
 兄弟での連携で挑んでくる彼らに、私も扉間と組んで対抗したっけ。

「あなたという、誰もが憧れる忍びの……敵であった事。ねぇ、お願いです。僕から、その誇りを……奪わないで下さい。兄さんも、僕も、あの日……出会った時から、あなたを」
「やめてくれ、そんなの……! オレは……私は君達の関心に値する様な人間じゃない! 命と引き換えにする様な、そんな、そんな事言わないでくれ」

 焦点の宿っていない瞳に、純粋すぎる憧憬の光を見た気がして、体が戦く。
 そんな目で見られる様な人間じゃない。平和を望みつつも、人殺しを厭いつつも、私の手は戦場の数を増やすに連れ、赤く染まっていった。
 英雄なんかじゃない、そんな高尚な人間じゃない。平和な世では人殺しと罵られるだけの事をしている人間なんだよ。
 君が、そんな目で見ていい人間じゃないんだ!

「僕達は、あなたの中で……看過出来ない敵で、あったでしょう? それは、僕に取って……誇りでしたよ」

 それなのに、彼は幸福そうに誇らしそうに私に告げる。

 始めて会った時は、森の中。怪我をしているこの子を半ば強引に治癒したのが出逢いの切欠。
 あの時はマダラに刀を向けられても医療行為を行ったと言うのに、どうして同じ事が出来ないのだ。

「あれ? 泣いてるんですか?」
「な、泣いてない! これ以上は何を言っても無駄だからな! 泣いても喚いても、力づくで治療する!」

 口の端から血を零しながら、彼は微笑む。擦れた声が
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