第十一話 死神その十八
[8]前話 [2]次話
「貴様の方からな。その時は容赦はしない」
「容赦は、か」
「このことは覚えておくことだ」
ここまで言うと顔を正面に戻し牧村に対して完全に背を向けた。白いスカートにそのフードが目につく。
「その時は。刈る」
「俺の魂をか」
「そのことはよく覚えておけ。それではな」
「何処に行く?」
「私の本来の世界に」
牧村に背を向けたまま前に歩きだした。
「戻る」
「また。来るのか」
牧村はその前に歩きだした彼に対して問うた。
「この世界に」
「無論だ。私はその為に来た」
歩きながら答える死神だった。
「だからだ。それは」
「当然か」
「そういうことだ。話はこれでいいな」
「ああ」
死神の言葉に対して頷いた。
「また会うことになる」
「今度は俺が魔物を倒す」
「さて、それはどうかな」
今の牧村の言葉には賛成してはこなかった。
「これについては競争としたいものだ」
「競争!?」
「そうだ」
これが死神の提案だった。
「どちらが先に出て来た魔物を倒すか」
「争うということか」
「無論その時で衝突することも考えられる」
牧村に背を向けながら述べる。
「その時はだ」
「闘うというのか」
「それも一興ではある」
ここで死神は足を止めた。そして牧村に再び顔を向けて。
「そうは思わないか?」
「俺は自分からは仕掛けはしない」
牧村はそれは確かに言った。
「だが」
「降りかかる火の粉は払う」
牧村の言葉に続けた形になった。
「そうだな?」
「その通りだ。俺は火の粉は払う」
彼もこのことを自分自身の口から述べた。
「どんな火の粉でもな」
「ではその時は容赦はしない」
死神はここでは牧村に鋭い目を向けてきていた。闘いはしないがそれを受けている目であった。その目を牧村に向けたうえで語っているのだ。
「いいな」
「俺も同じだ」
牧村も今の死神と同じ目になっている。
「貴様が来るのならばだ」
「そうならないに越したことはないのだが」
「だが。魔物は倒す」
牧村も譲るつもりはなかった。
「それは覚えておくことだ。いいな」
「わかった」
一言で死神に対して返した。
「では。また会おう」
「闘いはまだ続く」
死神は再度牧村に背を向けた。
「そのことも忘れるな」
「お互いにな」
こう言葉を交えさせて今は別れる二人だった。世界は完全に夜になり二人はその中に姿を消す。だが闘いは終わったわけではない。むしろはじまりと言っていいものだった。
第十一話 完
2009・1・30
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ