第十一話 死神その十四
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「来い。殴り潰してくれる」
「行くぞ」
しばてんの挑発を受ける形で一歩前に出た。鎌は両手に持ちそのまま音もなく前に出たのであった。
そのまま滑るようにして砂浜を進みそのうえで。両手に持ったその鎌を右から左に一閃させた。
「速い」
「ただ速いだけではない」
まずは後ろに跳びその鎌をかわしたしばてんに対して告げる。
「この鎌は命を刈り取る鎌」
「死神の鎌だからか」
「そうだ。斬るのは身体ではない」
こうも言うのだった。
「魂を斬るのだ」
「俺の魂を」
「貴様の魂、冥界に送ってやる」
言いながらまた前に出て来た。やはり音もなく進み出て来ている。
「苦しまずにな」
「苦しまずに冥界に送られるのは御前だ」
だがここでしばてんはその白い姿を消したのだった。
「むっ!?」
「死神が強いのはわかる」
死神の強さは認めていた。
「だが」
「だが?」
「俺は貴様以上に強い」
姿は見せずやはり声だけであった。
「それは言っておこう」
「私よりも強いというのか」
「俺もまた神と呼ばれていた」
「そうだったな」
闘いを見ていた牧村はしばてんの今の言葉に静かに頷いた。
「しばてんはな」
「猿神といった」
四国での古い伝承による。この場合の神とはほぼ魔物と言っても差し支えはない。日本では神と妖かしの境界は曖昧であり続けていたのだ。
「だが。それでもだ」
「何だ?」
「魔神の方々程ではない」
このことは謙遜しているようだった。
「あの方々程ではな。まだな」
「まだではない」
「何っ!?」
死神の言葉に顔を向けるしばてんだった。
「それはどういうことだ?まだではないとは」
「それは永遠だ」
鎌を両手に強く握り締めての言葉だった。
「貴様は私に今倒されるのだからな」
「やはりそう言うのだな」
「そうだ。ではまたはじめるか」
「言われずとも」
ここでまた声がした。
「これで。死ぬのだ」
「むうっ!?」
牧村が声をあげた。見ればしばてんのその巨大な白い両腕だけが虚空に姿を現わした。そしてその巨大な両腕がそれぞれ死神に対して拳を向けてきたのだ。
「両腕だけか」
「俺をただ力だけの存在と思うな」
しばてんの声がまた聞こえてきた。
「こうした術も使えるのだ」
「突如として姿を現わし襲い掛かる」
「そうだ」
「成程な」
死神はその己に迫る白い巨大な両腕を見つつ述べていた。
「そう来るか」
「さあ。どうする?」
しばてんは勝ち誇った声で死神に問うてきた。
「この俺の両腕。かわさなければ」
「かわす必要はない」
ここで死神はこう言った。
「別にな」
「何だと!?」
「何度も言うが私は神だ」
またこのことを言う死神だった。
「神に
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