第二話 天使その八
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「一斉に驚かすのじゃ。御主等でな」
「驚かせばいいんだね」
「それだけでいいんだ」
「そう、それだけで充分じゃ」
こうまで彼等に話すのであった。
「それだけでな。もうそれだけでよいのじゃよ」
「まあ驚かすのは好きだしね」
「っていうか大好き」
驚かせるという話を聞くとさらに元気がよくなる影達であった。その言葉には明るい活気さえ見られる。
「僕達の仕事だしね」
「それじゃあすぐに用意して」
「いつも街の物陰とかでやっておるじゃろう」
どうやら博士もこのことは承知しているようじゃった。一応念押しの様に問うがその言葉には一片の疑念もなく確信が見られた。
「そういうふうにやればよいからな」
「うん、任せて」
「じゃあ早速」
「頼むぞ。ではわしはじゃ」
ここまで言うと席を立つ博士であった。
「早速隠れさせてもらおう」
「打ち合わせ通りだね」
「わしがおっては話が成り立たん」
だからだというのであった。
「じゃからじゃよ。ここは隠れるぞ」
「うん、それじゃあそういうことでね」
「後は任せて」
「うむ。それではな」
博士は席から立ちそれから部屋の奥に隠れた。丁度ここで部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「早速かな」
「そうみたいだね」
影はそのノックする音を聞いて言葉を交えさせた。
「思ったより早いかな」
「そうだね。まだ九時だし」
壁にかけてある時計を見てまた言い合う。
「まあそれだけ昨日は緊張して寝れなかったんだろうね」
「やっぱり天使になったからかな」
「他にないでしょ」
「?誰かいるのか?」
ここで扉の向こうから声が聞こえた。その声は。
「間違いないね、彼だね」
「そうだね、まあわかっていたけれど」
「それじゃあ。話はこれで止めて」
「かかろう」
「教授」
牧村の声であった。その声を聞いて彼等はいっせいに身を隠した。
「入ります」
「うむ、どうぞ」
影の一つが博士の声色を使って応えた。
「おるぞ」
「わかりました。では」
こうして牧村は扉を開けてそこから部屋に入った。部屋に入るとそこには誰もいなかった。牧村はそれを見てまずは目を顰めさせたのであった。
「誰もいない。おかしいな」
「おかしくないよ」
これは声の一つが応えた言葉だ。今度は声色を使ってはいない。
「別にね」
「博士の声ではないな」
牧村は今の言葉に今度は眉を顰めさせた。
「博士、何処ですか」
「博士じゃなくてさ」
また影の一つが答える。するとその瞬間に部屋のあちこちから牧村が今まで現実には見たことのない者達が姿を現わしたのであった。
「やあやあ」
「牧村さんだよね」
「!?御前等は」
牧村は部屋のあちこちから姿を現わし彼を取り囲んできた
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