第十一話 死神その二
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「一つですが」
「気になること!?」
「何だそれは」
二人は老人の言葉に顔を向けた。どちらも怪訝な顔になっていた。
「私達だけじゃなくて」
「まだあるのか」
「冥界ですが」
「冥界!?」
「あそこか」
二人は冥界と聞いて眉を顰めさせてきた。
「あそこが何か考えているというのかしら」
「だとすれば何だ」
「冥皇は元々我等をよく思ってはいませんが」
老人は今度は冥皇という存在を言葉に出してきた。
「冥府の神々の中でも」
「それは知っているけれど」
女は怪訝な顔で述べた。
「けれど。それでも」
「どうも誰かを送り込んできたようです」
「よくわからないけれど冥界が私達の闘いに対して干渉してくる可能性があるのね」
「はい」
老人が言いたいのはそういうことだった。
「その可能性があります」
「そうか。冥界も暇なようだな」
男は言葉を笑わせることなく述べた。
「我々の闘いに干渉してくるのならな」
「それはそれで面白くなりそうですが」
老人は穏やかな声で述べた。
「まあ今は様子見ですね」
「そういうことね」
「今のところはな」
三柱の神々はここまで話したうえでその場からそれぞれ去った。彼等は今はこれで話を終えて場を後にするのだった。この時はであるが。
牧村は今日は大学のクラブ活動においてランニングに励んでいた。黒のジャージを着て学校のあちらこちらをかなりの速さで走っている。
その速さはかなりのもので普通のジョギングのものではない。陸上選手、それも長距離選手のそれを思わせる速さで走り続けているのだった。
「ちょっと牧村君」
その彼の横についているのは若奈だった。彼女は白いジャージでストップウォッチを片手に彼の横について自転車を進めていた。
「またどうしたの?」
「何がだ?」
牧村は正面を見たまま彼女の言葉に応えた。
「何かあるのか?俺に」
「あるわよ」
少し不平が混ざったような声になっていた。
「かなり速いじゃない。どうしたのよ」
「そんなに速いか」
「トレーニングよ」
彼女が言うのはこのことだった。
「それでこんなに速いなんて」
「トレーニングだからだ」
彼は相変わらず前を見たまま言うのだった。
「それはな」
「トレーニングだから?」
「そうだ」
彼は言う。
「だからこそ走る」
「それだけの速さでなのね」
「トレーニングは己の為にあるものだ」
彼の今度の言葉はそれだった。
「鍛える為にな」
「己を鍛える為でも」
「何だ?」
「ちょっとペースが速いわよ」
自転車の若奈もかなりの速さだ。それで額に汗さえかいている。
「本当に競技に出てるみたいじゃない」
「競技か」
「そうよ」
若奈はまたいう。
「これって
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