第十話 権天その二十二
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「あの男のことは」
「如何にも」
そして牧村もまたそのことを隠しはしなかった。
「手強い奴だったとだけ言っておく」
「仇は取る」
その声がさらに鋭いものになった。
「あいつの仇はな」
「友情か?」
「そういうところだ」
友情という言葉を聞いて。牧村はその目をぴくりと動かした。
「魔物にもそうした感情があるのか」
「不思議か?」
「少なくともそうは思っていなかった」
こう答えるのだった。
「魔物にそうした感情があることはな」
「だが。俺とあいつは古い付き合いだった」
「古い、か」
「何百年もな。その無念も晴らす」
「貴様の考えはわかった」
牧村は彼の言葉をそこまで聞いたうえで述べた。
「しかし俺とても倒されるわけにはいかなくてな」
「では。行くか」
「ああ」
こうして二人は闘うべき場所に向かった。そこは百貨店の裏側の殺風景な空き地だった。風が吹き荒び寂しげな場所である。そこで二人は向かい合ったのである。
「それではだ」
「はじめるのだな」
「その通りだ」
先に身構えたのはポルトーの方だった。そして。
「死んでもらう」
この言葉と共にその身体を変えてきた。身体は青い鱗に包まれていき顔が前に突き出て尻尾が生えてきた。赤く長い舌が出てそのうえ四足になった。見ればそれは青く大きな蜥蜴であった。
「それが貴様の真の姿なのだな」
「如何にも」
その巨大な蜥蜴の姿で答える。優に人の倍はある。
「怖気付いたわけではあるまい」
「もう慣れているからな」
平然と答えるのだった。
「最早な」
「だから何とも思わないのか」
「思わないと言えば嘘になるが」
一応はこう言う牧村だった。
「だが」
「だが?」
「それが魔物だな」
彼の言葉であった。
「そうした姿が」
「そうだがな」
「なら特に言うことはない」
今度は彼が構えに入りつつ述べた。
「倒すだけだ。それだけだ」
「ならば貴様もまた」
「やらせてもらう」
まずは両手を拳にしてきた。そして。
その両拳を胸の前で打ち合わせる。そこから眩い光が放たれ全身を包み込む。それが消えた時髑髏天使斗なってそこに立っていた。
「行くぞ」
右手を少し前に出して握り締める。これがはじまりの合図となった。
前に出たのは髑髏天使だった。その右手に剣を握っている。
そしてすぐに大天使になる。その背に巨大な翼が生え左手にも剣を持った。逆手に持っているサーベルであった。
剣を両手に持ち今空に舞い上がる。だがそこでポルトーが動いたのだった。
青い炎を口から放ってきたのだった。それは空を舞う彼に襲い掛かってきた。
「むっ!?」
「大天使のことは聞いている」
炎を放ったポルトーの言葉だ。
「既にな」
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