第十話 権天その十七
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「毎日ね。こっちも」
「お菓子もか」
「やっぱりね。どっちもやりたいのよ」
視線を横にやって述べた言葉だった。
「コーヒーもお菓子もね」
「両方見に着けたいのか」
「お父さんのもお母さんのも身に着けたいのよ」
言葉を少し変えてきた若奈だった。
「どちらもね」
「それならかなり大変になるな」
「それでもよ」
牧村の言葉にも確かな声で答えるのだった。
「どちらもね。私がこのお店継ぐのは決まってるし」
「それでか」
「妹達も頑張ってるけれどね」
実は彼女は長女なのだ。三人姉妹のうちの長女なのである。
「それでも。私がお姉ちゃんで家を継ぐから」
「随分気が張ってるな」
「否定はしないわ。それで牧村君はね」
「俺は?」
「味を見て欲しいんだけれど」
「コーヒーとお菓子のか」
「コーヒーは合格よね」
まずはコーヒを再び確かめてきた。
「そっちは。そうよね」
「さっき言った通りだ」
落ち着き払った声で述べた。
「見事なものだ」
「そうよね。だったらやっぱり今度は」
「お菓子もか」
「お金の方はサービスするから」
さりげなくいい条件を出してもきた。
「だから。食べてみて」
「美味かったら頼む」
「御願いするわね」
「ああ。しかしこのタルトは」
話をしながらタルトを食べていた。その柔らかい中身も硬めの生地もさくらんぼも味わいながら若奈に対して述べるのだった。
「いいな。やはり」
「お母さんのタルトだからね」
「奥さんは元々ケーキ職人だったな」
「そうよ。覚えてくれてるのね」
「長い付き合いだからな」
時間を出して述べるのだった。
「だからな」
「そういえばここに来るようになって長いわね」
「家族で来たのは小学校の時だったな」
「その時に牧村君とはじめて会ったんだったわね」
「それから同じ中学校になってな」
「で、今に至ると」
二人は今度はお互いの出会いについて話した。
「思えば私達も結構長いわよね」
「ああ。まさか大学まで一緒になるなんてな」
「あら、嫌なの?」
ここでその垂れ目をくすりと頬笑まさせる若奈だった。
「それは」
「嫌か、か」
「そうよ。そこはどうなの?」
「嫌な人間とは話をしないし嫌いな場所には絶対に足を踏み入れない」
牧村は彼女の今の問いには直接答えずにまずはこう述べた。
「俺はな」
「それはそのまま受け取ってもらっていいのかしら」
「そう思うのなら思えばいい」
「相変わらず微妙に素直じゃないわね」
「そうか」
「そうよ。本当に無愛想なんだから」
そうは言ってもその顔は笑ったままの若奈だった。
「格好つけてるし」
「そんなつもりもないがな」
「けれどそう見えるわよ」
「見えるが実際は違う」
「
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