第十話 権天その十三
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「では。その天麩羅とやらをな」
「食べに行きましょう」
「そうしましょう。では」
老人はここでまた男に声をかけてきた。
「今回の魔物は。御願いしますよ」
「わかった」
男は老人のその言葉に対して静かに短く、だが強く言葉を返したのだった。
「それではな」
「そのことは御願いします」
三人はこれで話を終えそのまま何処かへと姿を消した。後にはその泉達が流れたままだった。静かにその流れる音を聞かせながらそこにあるのだった。
牧村は相変わらずテニスにフェシングにトレーニングに励んでいた。その顔つきも身体つきも次第に変わりより精悍なものになっていっていた。
それは当然ながら周りからもわかった。ある日若奈の喫茶店に行った時にカウンターにいる彼女からそのことを言われたのであった。
「最近変わったわね」
「そうか」
「ええ。顔がもう違うわ」
まずはカウンターの席に座る彼の顔を見て述べた。
「何か。もう」
「どんな感じだ?」
「引き締まって鋭くなって」
「元からそうだと言っていなかったか?」
「余計によ」
彼を昔から知る若奈の言葉である。
「余計に。もう陸上部員というよりは」
「いうよりは?」
「ちょっとこれで正しいかどうかわからないけれど」
ここで少し首を傾げさせるのだった。
「あれね。騎士かしら」
「騎士か」
「戦士っていうわりにはスマートだし」
これが若奈の今の牧村を見ての言葉である。
「だから。それで」
「そうか。今の俺は騎士か」
「とにかく。引き締まって」
このことを言うのであった。
「鋭いから。けれどあれね」
「何だ」
「野生とかはないわね」
このことも感じ取っているのだった。
「そういうのはね。感じないわ」
「別に野生を求めてはいない」
それは自分から言う牧村だった。
「それはな」
「そうなの」
「そうだ。だが騎士か」
牧村は彼女のその言葉にあるものを見たのだった。
「今の俺は」
「丁度サイドカーにも乗ってるわよね」
「ああ」
話は今度はそれに及んだ。
「それはな」
「それもあるし」
「つまりサイドカーは馬になるのだな」
「何か。そうね」
今度は首を少し捻ってから彼に述べた。
「そうなるわね。牧村君が騎士だと」
「そういうことか」
「私の考えというか見たところだけれど」
自分の主観であるというのは断るのだった。
「そんな感じに見えるわ」
「そうか。そう見えるのか」
「ええ。とにかく変わったわね」
そしてまたこう言うのである。
「余計に。強くなったような」
「身体はか」
「精神的にもじゃないの?」
若奈はまた彼に告げた。
「そちらも。そう見えるけれど」
「果たしてそうかな」
このことには自
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