第十話 権天その十一
[8]前話 [2]次話
「この国の主食よ」
「食べやすく実に美味しいです」
「そうか。美味いのか」
「そしてお箸は」
次はそちらの話になった。
「それは何だ?」
「食器よ」
「皿と同じか」
「ええ。ただ手に持ってね」
「手に!?」
「それで使うのよ」
女が男に説明していた。
「二本で一対なのを持ってね」
「二本で一対か」
「簡単に申し上げると細長い棒を二本持ってそれで食べ物を掴むのです」
「細長い棒二本でか」
「そうです」
また述べる老人だった。
「そのようにして」
「わからんな」
ここまで話を聞いた男の感想だった。
「それを聞いてもな」
「そう。わからないのね」
「想像ができない」
首を傾げながらの言葉であった。
「どうにもこうにもな」
「だったら行っていいわ」
これが女の考えだった。
「それだったらね」
「そうですね。やはりここは」
「一緒に来てくれるかしら」
「最初からそのつもりだ」
男はまた二人の同胞達に対して述べた。
「それではな。行こう」
「わかりました」
「それじゃあ」
「それでだ」
話を聞いているうちに彼はまた言ってきた。
「その料理だが」
「それですか」
「何という料理なのだ?」
彼が次に気になったのはそのことだった。
「それで。この国の料理だというが」
「天麩羅よ」
「天麩羅というのか」
「油で色々なものを揚げて食べるのよ」
こう男に説明する。
「そうして食べるのよ」
「油で揚げるのか」
「興味を持ったかしら」
「ああ」
静かに女に言葉を返す。
「はじめて聞く料理だからな」
「料理はもう完全に別のものになっているわ」
「俺が封印される前の時代よりもか」
「あの頃は何時だったでしょうか」
老人はふと彼等が封印される前のその時代について思いを馳せた。
「あの頃は」
「確かローマ帝国の時代だったかしら」
女が彼の今の言葉に答えた。
「カエサルというのがいたのは覚えているわ」
「ええ、あの人は覚えていますよ」
「俺もだ」
老人はにこやかに笑い男は相変わらずの険しい顔であった。だが二人共その名前は知っているのだった。
「見事な人物でした」
「人とは思えぬ気配があったな」
「確か東の方で救世主が出てその時だったわね」
「そうでした。その時に封じられていました」
「その時の髑髏天使にな」
「そうだったわね。確かね」
女もその時のことを思い出したうえで述べた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ