第十話 権天その十
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「それはな」
「そう。今のところはね」
「少なくともそうでなくなるとしてもまだ先だ」
男はこうも述べた。
「まだな」
「本来はそれは徐々にだけれど」
「今回は事情が違う」
男はそこを指摘した。
「まだ先といってもこれまでの髑髏天使よりも早い」
「それもずっとね」
「それでです」
老人がまた言ってきた。
「今度の魔物ですが」
「俺がまた出そう」
男が一歩前に出て名乗りをあげた。名乗りつつ側にある滝に触れた。するとその滝は瞬く間に凍りつき動かなくなってしまった。
「俺がな」
「貴方がですか」
「もう一人連れて来た」
こう二人に対して述べた。
「だからだ。その者にやらせてくれ」
「わかったわ」
「それでは」
二人もまた彼の言葉を受けた。そのうえで頷いてもみせた。
「そういうことで」
「任せたわ」
「わかった。それではだ」
男は滝から手を離した。すると先程まで凍りついていた滝はすぐに元に戻りまるで何事もなかったかのようにまた静かに流れだしたのだった。
「今から向かわせる。いいな」
「はい。それでは」
「話はこれで終わりね」
二人は話が決まったと見てあっさりと言葉を返してまた述べた。
「それでまだ時間があるかしら」
「時間?」
「そうよ。いいお店を知ってるのだけれど」
「人間の店か」
「駄目かしら」
女が男に対して問うてきていた。
「料理のね。日本の料理だけれど」
「この国のか」
「私達が眠っている間にかなりの進歩があったのです」
老人もまた彼に述べた。
「料理に関しても」
「料理に?」
「そうです」
老人はまた述べた。
「それはもう凄いもので」
「確かに世界は変わっているのはわかるが」
これは男もわかっていた。これまで世界をざっと見渡しただけで彼がまだ封印されていなかった頃から見て全く別の世界になってしまっていることは。よくわかっていた。
「だが。それでもだ」
「はい。料理は特にです」
「美味しいわよ」
女は楽しげに笑みを浮かべて彼にまた述べた。
「だから。どうかしら」
「そうだな。では俺も是非」
「ただ。貴方はお米は知らないわよね」
「米!?」
「それにお箸も」
「何だ、それ等は」
実際にこう返す彼だった。
「その米や箸というものは」
「やっぱりね。知らないと思ったわ」
「私は百の目ですぐに知ることができましたが」
「米は食い物だな」
男もこれはすぐに察しがついた。
「そうだな」
「ええ、そうよ」
「それはその通りです」
二人もまたその言葉を認めて頷いた。
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