第十話 権天その八
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「何でもだな」
「そうじゃ。試しに君の妹さんじゃが」
「あいつか」
「妹さんおったじゃろう?」
言ったすぐ側から問い返すのが歳を感じさせた。ただし今回のそれは多分に危うさを意識させるものではあったが。
「確か」
「一人な」
だが牧村はその危うさには突っ込みを入れずそのまま答えたのだった。
「いる。中学生のな」
「ではその中学生の妹さんにこのプティングを作ってもらう」
「ああ」
「そうしたらイギリス人よりは美味いプティングにはなるぞ」
「あいつはお菓子はあまり作らないが」
「そうなのか?」
「魚や野菜の料理が好きだ」
こう述べる牧村だった。
「天麩羅や刺身、佃煮やそういったものがな」
「何じゃ、和食派か」
「とにかく醤油を使った料理を作るのが好きだ」
やはり和食であった。
「そういうものがな」
「ふむ。中学生でそれは珍しいのう」
「博士もそう思うか」
「中学生といえばあれじゃろう?」
博士は自分の頭の中にある中学生のイメージを元にして彼に話しはじめた。
「やはり。クレープだのケーキだのアイスクリームだのをじゃな」
「そういったものも好きだ」
「ではどうしてそちらを作らんのじゃ?」
「何でもお菓子を作るのは苦手らしい」
これが牧村の返答だった。
「それでらしい。自分では作らないとのことだ」
「ふむ。お菓子を作るのは苦手か」
「とりあえず和食なら大抵は作ることができるな」
「それはそれで凄いことじゃがな」
博士は牧村の話を聞きつつ述べた。
「和食はあれで難しいものじゃからのう」
「やはりそう思うか」
「少なくとも中学生で得意にしているというのはあまりないのう」
博士はここでも己の中にある女子中学生のイメージを元に語った。
「うちの婆さん位でないとな」
「博士の奥さんってお幾つ?」
「確か八十年は連れ添ってるよね」
横から妖怪達に突込みが入った。
「確か博士が百歳いってるんだっけ」
「じゃあやっぱり」
「うむ、もう百歳じゃな」
こう妖怪達に返したのだった。
「目出度くのう」
「夫婦で百歳って」
「人間じゃ滅多にないんじゃ」
「しかも結婚して八十年って」
「ほっほっほ、よいことじゃろう」
妖怪達の驚いたような言葉を横から聞いて楽しそうな笑い声をあげる博士であった。
「縁起のいいことじゃ。ダイアモンド婚もとうの昔に超えておるわ」
「そこまで一緒なのか」
「うむ」
今度は牧村に対して楽しげな言葉で返した。
「そうなのじゃよ。実はのう」
「八十年か」
「料理をやって九十年じゃ」
歳月が十年プラスされた。
「そんなものじゃよ」
「あいつはまだはじめて数年だが」
大体そんなものである。中学生ならば。
「それで味はどうなの
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