第十話 権天その六
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「僥倖だった」
「僥倖ではないがな」
「違うか、これは」
「君の強さがその権天使の域に達しておったのじゃよ、その時にな」
「それであそこでなることができたのか」
「そういうことじゃ。僥倖ではなく必然じゃ」
こう彼に言うのであった。
「これはな」
「そういうものか。必然か」
「わしはそう思う。これからもその必然は続くぞ」
「闘いを重ね強くなる度にだな」
「うむ。強くなることじゃ」
牧村を見つつ声をかけた。
「よいな。それでな」
「わかった。しかし」
「しかし?」
「炎の使い方も考えていくか」
彼が今度考えたのはこのことだった。
「そちらもな」
「ただ燃やすだけではないのじゃな」
「あの時はまず剣に及ばせ」
持っている二本の剣に炎を及ばせそれでマニトーの糸を断ち切った。彼が劣勢を挽回したあの時である。
「そして勝敗を決した」
「周りに炎を炸裂させてじゃな」
「他にもあるかも知れない」
考えながら述べた言葉であった。
「その二つ以外にな」
「そうじゃな。何でも考えてみることじゃ」
博士は牧村のその言葉を聞いてまた述べてきた。
「何でもな。考えてみるとよい」
「考えるのか」
「人間考えることも大事じゃよ」
これもまたよく言われている言葉であった。
「さもないと頭が錆びてしまうわ」
「だが考え続けていると」
「錆びないどころかどんどんよくなってくる」
そういうものなのである。頭というものはそうした意味で無限に動き進化することが可能なものなのだ。考えてみれば不思議なものである。
「それは闘いにも活きるしのう」
「だからこそ余計に考えるのだな」
「その通り。考えることじゃよ」
博士はまた牧村に告げた。
「よくな。そしてやってみることじゃ」
「わかった。では色々とやってみよう」
「そうするといい。そして」
「そして!?」
「おそらく手に入る力は炎だけではない」
今度はこう彼に言ったのだった。
「それはな。一つだけではないぞ」
「そうか」
「そうじゃ。まあまだ他の天使については詳しいことはわからんが」
「権天使だけか」
「まだな」
また牧村に答えた。
「それより上はわからんよ」
「謎はこれからというわけか」
「このことは済まないと思っておる」
博士もこのことについて牧村に謝罪するのだった。
「わかっていればそれだけ対処ができるからな」
「それはいいがな」
だが牧村はその謝罪の言葉を受けたうえでこう返すのだった。
「別にな」
「いいのか?」
「少なくとも今こうしてわかる」
彼は今を語るのであった。
「それならそれでいい。それに」
「それに?」
「かなり先のことを言われても実感が湧かない」
こう述べるのだった。
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