第十話 権天その二
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「それはな。わかっておる」
「ならばだ。奴等も」
「少なくともあの十二人は従神はおらんようじゃな」
「そうなのか」
「まだ全て判読したわけではないがな」
一応はこう前置きもする博士であった。
「じゃがな。読んだところではじゃ」
「いないのか」
「うむ。それは安心してくれ」
「わかった」
「ただ。わしも気になることは気になるがな」
だが博士は考える目で首を左に傾けつつこう述べたのであった。
「少しな」
「少し?」
「ひょっとしたらじゃよ」
そしてまた言う。
「従えている神はおらんが上におるかもな」
「上にか」
「若しくは奴等のうちの一人がじゃ」
「一人が?」
「主神かも知れんな」
主神という存在を口に出すのであった。
「ひょっとしてな」
「主神か」
「神にも順列はある」
これはどの神話でも宗教でも同じである。先のギリシア神話におけるゼウス。ポセイドン、ハーデスがそれぞれそうであるようにだ。神が一人しか存在しない宗教も入れてのことだ。
「じゃから。主神は奴等の中にも必ず存在するな」
「それは確実なのだな」
「文献でもまだそこまでは調べてはおらんが間違いはない」
ここでは強い言葉になる博士であった。
「それはな」
「そうだな。言われてみればな」
牧村も彼の言葉に頷いたのだった。口に手を当てて考える顔で。
「いて当然の存在だな」
「じゃが今彼等と闘う時ではないぞ」
「神とはか」
「やはりじゃ」
博士の表情がここで一気に険しいものになって言葉が出された。
「神は神じゃ」
「神か」
「人とは隔絶たる力がある」
神が神である由縁である。人やあらゆるものに対して絶対の存在である、それが神なのだからだ。
「魔物に対しても今は相当苦戦しておるじゃろう」
「マニトーの闘いでも」
牧村はまたマニトーのことを話に出してきた。
「正直なところな」
「権天使にならなければ危なかったじゃろう」
「その通りだ」
それを自分で認めるのだった。
「さもなければ。敗れていた」
「権天使でまだ三番目の階級じゃ」
「あれだけの力でか」
「神は天使より上の存在じゃ」
これもまた自明の理であった。それだけの力の差があるのである。
「じゃから。今闘ってもじゃ」
「勝てはしないか」
「向こうもそう言っておると思うが?」
「その通りだ」
このことも博士に述べるのであった。
「今は闘う時ではないとな。言ってきた」
「魔物は闘いを楽しむものじゃからな」
「今の俺と闘っても面白くはないということか」
牧村の目が語ったところで怒ったものになった。
「いや、それも道理か」
「そうじゃ。魔神から見ればな」
博士はすぐに目を元に戻した牧村に対して述べた。
「弱い
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