第二話 天使その五
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「どうせあれじゃろ。元の姿がかなり残っておったのじゃろ」
「そうかな。上手くやっていたよな」
「それもかなりね」
「どうだか。しかしこの酒を買って来たのはいいことじゃ」
博士はもう己の関心を酒に完全に向けていた。杯は影達が用意していた。これで後は飲むだけである。
杯に酒が注がれ後は。博士も影達もその杯を手に取って言うのであった。
「乾杯」
「乾杯」
杯を打ち合わせてそれからまずは一気に飲む。酒の持つその独特の味が口の中を支配する。博士はそれを堪能してからまた言った。
「やはり酒はいいのう」
「博士って日本酒好きだよね」
「酒は何でも好きじゃ」
今までとはかわり変わって朗らかな笑顔になっていた。早速先程の豆腐を食べている。塩辛は影達がまずは皿に出してそれをそれぞれの箸で取って食べている。宴はもうはじまっていた。
「ビールでもワインでものう」
「いいねえ、それ」
「だから博士好きなんだよ」
「わしが好きなのか」
「うん」
「そうだよ」
にこやかに笑って博士に答える。
「お酒を一緒に飲んでくれる人間ってあまりいないからね」
「僕達それが寂しくて」
「ならもっと人前に出るのじゃな」
またここで一杯口に入れてから述べる博士であった。
「そうすれば一緒に飲んでくれる奴がもっと出て来るわ」
「その前に皆逃げるから」
「そうだよ」
だが影達はこう言って博士に言い返す。見れば彼等もそれぞれ肴をつまみそれと共に酒を楽しんでいる。見れば肴もかなりの量がある。無論酒もだ。
「だからそれはね」
「できないんだ」
「まあそうじゃろうな」
そして博士もそれはわかっているようだった。彼等の言葉を聞いて頷いている。
「そうおいそれと御主等と一緒にいようという者もおらんわ」
「何だ、わかっていて言ったんだ」
「人が悪いよ、それって」
「わしは性格が悪い」
博士も否定しない。
「わかっておるじゃろうに」
「曲者なのは間違いないね」
「それもかなり」
「アクも強いし」
「若い頃から難しい人間じゃと言われてきたわ」
自分でもこのことを肯定する。
「だから今更言われてものう」
「そうなんだ、やっぱり」
「やっぱりか」
「だってわかるし」
「ねえ」
影達はそれぞれの顔を見合わせて言い合う。
「博士とは本当に付き合い長いから」
「こうやって一緒に飲むのも百や二百じゃ利かないでしょ」
「確かにそうじゃな」
今度は枝豆を一粒一粒ずつ口の中に入れて噛みながら述べる。淡白だが確かである枝豆の味が噛まれると共に口の中を支配していく。
「何日かに一回、いや三日に一回はこうして飲んでおるかのう」
「毎日でしょ」
「そこ誤魔化さないの」
「ではそれこそ一万や二万はいっておるぞ」
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