第九話 氷神その十二
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「それがこの」
「大天使というわけか」
「その通りだ」
両手の剣を構えながらの言葉であった。
「これならばだ。貴様の糸とて」
「さて」
しかし今の髑髏天使の言葉に。マニトーは冷笑を以って返すのだった。それがどうしたと言わんばかり、いやそのものの態度であった。
「それはどうかな」
「大天使なぞ恐れるに足らずとでもいうのか」
「如何にも」
自信に満ちた声で言葉を返してきた。
「そう言っているのだ」
「ならばだ」
髑髏天使もその言葉を聞いて構えを解かずに己の言葉を返した。
「今それを見せよう」
その両手の剣を縦横無尽に切り回しだした。それにより周りの糸を断ち切ろうとする。だが。それは彼の望み通りにはいかなかったのだった。
「むっ!?」
切った側からくっつくのだ。その糸が。まるで何事もなかったかのように元に戻ってしまう。それは丁度先のアルラウネとの闘いと全く同じであった。
「そういうことか」
「アルラウネと同じだ」
それはマニトー自身も言うのだった。
「俺の糸は。剣では断ち切れん」
「そういうことか」
「そしてだ」
マニトー自身は動かない。しかしその間にも糸は髑髏天使を覆っていく。少しずつだが確実に。まさに真綿で首を絞める感じであった。
「あの時と違い今は逃げられんぞ」
「この囲いからか」
「そうだ。終わりだ」
勝利を確信した言葉であった。
「髑髏天使。貴様もな」
「くっ・・・・・・」
「確かにその剣の使い方は見事だ」
今の剣の腕は彼も認めるところであった。
「だが。それだけで俺は倒せないのだ」
「剣だけではか」
「その通りだ。それではだ」
糸の覆いがさらに狭まる。
「死ね。ゆっくりとな」
そのまま髑髏天使を包み押し潰さんとする。
糸が遂に彼を完全に覆った。もうこれで逃げられはしない。マニトーが会心の笑みを浮べた。その時だった。
突如として糸の色が変わった。それまでの純白が代々に変わったかに見えた。それはすぐに紅蓮になり生き物のように上にのたうちだした。それは。
「火!?」
「これは」
ここで髑髏天使の声もした。
「どういうことだ」
その火により糸が消えていく。燃え尽き消え去ってしまった糸の屑を踏み越えるようにして髑髏天使が姿を現わした。見ればその鎧も二本の剣も赤いものになっていた。
「これは」
「火だ」
マニトーが言った。
「貴様が火を使ったのだ」
「馬鹿を言え」
しかしそれは髑髏天使自身が否定することだった。
「俺はそのようなものは使ってはいない」
「いや、使った」
マニトーが彼の言葉を否定する。
「今はっきりとな」
「どういうことだ。だが」
ここではじめて自覚する彼だった。
「力がみなぎる。これは」
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