第九話 氷神その十
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「さて」
一人になった彼はまずはウェンティゴが言った言葉を思い出していた。
「この学校にいると言っていたな」
魔物のことである。すぐにその魔物の気配を探った。
するとすぐに感じた。上だ。
「そこか」
すぐに傍にあった階段を登る。するとその階にいた。誰もいない廊下の中央に黒く巨大な。禍々しい姿をした八本足の怪物がそこにいたのである。
「蜘蛛か」
「残念だが蜘蛛ではない」
見ればその頭は人のものであった。醜い、やけに鼻が大きくしかも曲がり顔中に疣がある男の顔だった。その顔から言葉を発してきたのである。
「我が名はマニトー」
「マニトーだと」
「そうだ。アメリカから来た」
こう牧村に言ってきたのだった。
「ウェンティゴ様に連れて来られてな」
「そうか。貴様もこの国に来たというわけか」
「髑髏天使よ」
彼をこう呼んできた。
「貴様のことはもう聞いている」
「あの男からだ」
「そう、ウェンティゴ様からだ」
あくまであの男を本来の名で尊称で呼ぶのであった。
「御聞きしたのだ。今は大天使だな」
「そうだ」
牧村は彼の目を見据えつつ答えた。見ればその大きさは彼の優に三倍はある。その巨体で廊下を塞いでしまっているのだった。
「それがどうかしたのか」
「ならば相手にとって不足はない」
舌なめずりせんばかりの声であった。
「このマニトーの相手にな」
「魔物といっても夢を見るようだな」
牧村はその舌なめずりせんばかりの声に対して述べた。
「魔物であってもな」
「何が言いたい」
「俺が相手にとって不足はないか」
「違うとでもいうのか?」
「貴様にとっては残念だがその通りだ」
こう言葉を返すのであった。
「何故なら俺は貴様とは比較にならない程強いからだ」
「それだけの自信があるということか」
「それを今から見せてやる」
言いながら構えに入った。
「いいな」
「さらに面白い」
牧村のその自信を聞いてもマニトーは怯まない。むしろその声にある不気味な舌なめずりをさらに嫌らしいものにさせてきたのであった。
「こうした相手でなければ戦うかいがないからな」
「それではだ」
両手をゆっくりと前に出してきた。そうして。
その両手を拳にして胸の前で打ち合わせる。すると光がそこから発され彼の全身を包み込んだ。光が消えたその時。彼は髑髏天使となっているのだった。
「行くぞ」
右手を顔の前に出してそこから胸に向かって下げながら握り締める。これがはじまりの合図となった。
まず動いたのはマニトーだった。糸を発してきた。
だがそれは尻から出してきたのではなかった。口から出してきたのだった。そしてその糸は。静かに髑髏天使の周囲を漂いだしたのであった。
「糸か」
「何の為の
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