第九話 氷神その三
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「この老人じゃが」
「日本の魔神だな」
「おそらくその正体は百目じゃ」
「百目!?」
百目と聞いて声をあげる牧村だった。
「それは何だ」
「身体中に目があってな」
「目がか」
「実際にどれだけ目があるかわからんが」
こうも断る博士であった。
「とにかくじゃ。身体中に目があってじゃ」
「ああ」
「それで何でも見渡せる。そういう奴なのじゃよ」
「それが日本の魔神か」
「そうじゃ。それがあの老人の正体じゃよ」
「わかってはいたが」
牧村は博士の話を聞きながら呟いた。
「あの姿はやはり。偽だったか」
「人間の姿は仮初めじゃ」
博士はこうも話した。
「他の魔物と同じくな」
「そうか。ではあの温和な笑顔もまた」
「左様。偽りのものじゃからな」
「わかった」
牧村は今の博士の言葉に真剣な顔で頷いてみせた。
「そうだな。それには騙されはしない」
「そうあるべきじゃ。そして次はじゃ」
「あの女のことか」
話の流れで彼女のことになるのは読んでいた。だからこう問い返したのであった。
「そうだな。あの女のことだな」
「その通りじゃ。無論あの女も人ではない」
「あの姿は仮初めか」
「その通りじゃ。あれの正体は狐じゃ」
「狐!?」
「話には聞いたことがあると思うがな」
博士は一旦言葉を止めてから述べた。
「九尾の狐じゃが」
「あれか」
「やはり知っておるようじゃな」
牧村が気付いたような顔と言葉を出したので博士もわかったのだった。
「その通りあの中国のな」
「今日本で殺生石になっているのではないのか?」
彼が知っている九尾の狐はそれであった。殷を滅ぼしインドを混乱に落としいれ周を惑わしそして遂には日本に来たあの狐だ。様々な名で呼ばれてきているが本朝においては玉藻前という名で鳥羽法皇の側に仕え法皇の命を吸い取っていたと言われている。その狐である。
「確か。あの狐は」
「狐といっても様々じゃてな」
だが博士は牧村にこう答えるのだった。
「中国では狐には様々な階級があってのう」
「階級か」
「それと共に魔力もあがるのじゃよ」
こう彼に話すのであった。
「魔力もな。千年生き魔道を極めた狐は」
「その狐は」
「尻尾が九本になる。それが九尾の狐なのじゃよ」
「それがあの女の正体か」
「さっき君が言った日本に来た奴じゃが」
「あいつか」
その玉藻前である。言うまでもなくその魔力は恐ろしいものがあった。何しろ国を滅ぼし惑わす程である。恐ろしいものがないわけがなかった。
「あれは神にまでは達しておらんかった」
「神にはか」
「じゃがあの女は違う」
「魔神だからか」
「そういうことじゃ。どれだけ生きておるかもわからん」
こう牧村に話すのであった。
「そ
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