第九話 氷神その一
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第九話 氷神
空港において二人はいた。人が行き交う中で二人並びそこで人を見ていた。
空港の中は白く窓の多い場所だった。窓からは滑走路が見えそこには多くの航空機が止まっている。大型のものが多くそれがこの空港の規模の大きさを知らしめていた。
「この空港に来るのははじめてよ」
「そうでしたか」
「日本で使った空港は成田だったかしら」
女はこう横にいる老人に話すのだった。話しながら目だけで周囲を見回していた。見回しながらまた老人と言葉を交えさせるのだった。
「あそこよりは小さいわね」
「しかしいい空港ではないですか」
老人は前を見たまま女に述べた。
「この関西新空港も」
「国際空港だったわね」
「ええ」
女の言葉に頷いた。
「そうですよ。ですから外国の方も多いですね」
「そうね。ただ」
「ただ?」
「今日来るのよね」
声が怪訝なものになっていた。
「今日。この時間に」
「その通りですが」
「その割には姿が見えないけれど」
声にある怪訝なものがさらに増すのであった。
「どういうわけかしら」
「ですが気配は感じますよね」
老人は前を見たまま女に対してまた述べた。
「あの方の気配は」
「まあね」
それは感じているのだった。女にしても。
「けれど。姿が見えないのは」
「以前より悪戯好きな方でしたが」
「それでも。迎えに来ているのに姿を見せないのはどうかと思うわ」
「まあそう怒らないで今は待ちましょう」
苛立ちを見せている女に対して老人は穏やかな顔のままであった。その顔と顔と同じものになっている声で彼女に対して続ける。
「ゆっくりと」
「じゃあ場所を変えない?」
女は老人に顔を向けて言ってきた。
「場所を。どうかしら」
「そうですね。ここにおられるのは間違いないですし」
「喫茶店にでも行きましょう」
こう老人に提案したのだった。
「そこで待っていれば来ると思うわ」
「そうですね。それでは」
老人も彼女のその言葉に頷いた。
「そこで待ちましょう。ゆっくりと」
「そうしましょう。それじゃあ」
「はい」
老人も頷き踵を返す。二人で何処かに行こうとする。しかしその踵を返したそこに。その彼が立っていたのであった。
「あら」
女は彼の顔を見て声をあげた。その彼は赤い肌に精悍な顔立ちと白いたてがみを思わせる長い髪と眉を持っている。青いジーンズに白いシャツ、黒い皮のジャケットという格好だ。背は高く筋肉質の身体をしている。その顔を見ると彼が日本人とはまた違うことがわかる。
「そこにいたのね」
「今来た」
男はこう女の声に言葉を返した。
「今な」
「気配は感じていたけれど」
少し咎める声で男に述べた。
「それ
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