第八話 芳香その二十
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「だがな」
「だがな。まだ何かが」
「そうだ。鼻だ」
彼は言った。
「貴様の香りは強い。それを感じたのだ」
「それで今剣を」
「その通りだ。あともう少しそれを感じるのが遅ければ俺は敗れていた」
こう述べながら剣を抜く。剣には緑の血が柄の近くまで達していた。
「だが。その香りを感じたその瞬間に」
「剣を出し」
「俺は勝利を収めた。そういうことだ」
言いながら身体を後ろに向ける。アルラウネは立ったままで今事切れようとしていた。既にその身体のあちこちから赤い炎が起こっていく。
「それによりな」
「くっ、私が花であることが仇になったということね」
「あらゆることが仇になる」
静かにこう返した。
「この世にあるものはな」
「そうね。私のこの香りさえも」
「そういうことだ。わかったな」
「わかるしかないわね」
無念さをあえて虚勢で隠しつつ笑ってみせての言葉であった。
「実際に今やられたのだから」
「そうか」
「見事よ」
今度は純粋に彼を褒める言葉を口にしてきた。
「私を倒すなんて。どうやら貴方は本物ね」
「本物。俺がか」
「ええ。髑髏天使」
今の彼の名も呼ぶ。
「これまでの髑髏天使の中でもかなりのものね」
「だからこそ貴様を倒せたというのだな」
「その通りよ。けれど」
アルラウネはここでまた言うのであった。
「一つ。覚えておくといいわ」
「むっ!?」
「確かに私は倒せたわ」
緑の血を口から出しながらの言葉であった。
「けれど。あの方々はそうはいかないわよ」
「十二魔神か」
「ええ。あの方々は」
彼等についての言葉であった。
「そうはいかないから。それはわかっておくことね」
「こうはいかないというのだな」
「そうよ。少なくとも大天使ではね」
彼の今の階級である。
「勝てはしないわ。絶対にね」
「そうか」
「けれど」
しかしここでアルラウネは言葉を変えてきた。次第にその身体を紅蓮の炎に包ませながら。それでも彼に対して言うのであった。
「私を倒したのは褒めてあげるわ。この私をね」
「それは受け取っておく」
静かな調子でその言葉を受けるのだった。
「今こうしてな」
「御礼は言っておくわ」
身体を包む炎がさらに強くなってきた。
「最後にね」
そしてその紅蓮の炎に包まれていった。アルラウネの形になり紅蓮の炎が燃え上がる。その中で消えた魔物を見送りつつ彼は戦場から姿を消すのであった。
闘いを終えた彼はそのまま帰路につく。しかしその前に。
あの老人がいた。彼はにこやかな笑みを浮かべて彼の前にいるのだった。
「また貴様か」
「お見事でしたよ」
彼はこう牧村に対して言うのであった。既に髑髏天使から戻っている。
「今先程の闘いぶり
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