第二話 天使その三
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「それを食べた」
「そうなの、抹茶なの」
「美味いぞ」
あまりそう思っているとは聞こえない言葉ではあった。
「抹茶アイスはな」
「抹茶のお菓子は私も好きだけれど」
これは彼女も同じであった。
「それでも。そんなに美味しいのね、ハーゲンダッツのって」
「何なら食べてみればいい」
素っ気無く妹に告げる。
「行きたいのならそのコンビニに行くか?」
「ううん、今はいいわ」
今の兄の申し出は断る未久だった。
「今日は帰ったら西瓜があるから」
「西瓜か」
「私が西瓜好きなのわかってるでしょ」
「まあな」
未久は西瓜が大好物なのだ。兄である彼がそれを知らない筈がなかった。
「だから。今日はね」
「西瓜か」
「アイスはまた今度にするわ。だから」
「すぐに家に帰るんだな」
「ええ。じゃあ乗るわね」
「乗れ」
兄の言葉を受けてそのサイドカーに乗った。補助座席に置いてあった赤いヘルメットを取ってそれを被ってから乗るのだった。
「こっちはいいわ」
「じゃあ行くぞ」
「ええ、御願い」
サイドカーのアクセルがかかり発進する。牧村は妹を乗せて家に帰る。妹は彼の横で明るく話していたがそれでも。彼の心の中はあの髑髏のことで満ちていてどうしてもそれには乗れないでいた。
八条大学大和田研究室、通称悪魔博士の部屋。その部屋の中でこの部屋の主である大和田教授、通称悪魔博士はまた影達に囲まれて彼等のうちの一人の話を聞いていた。自分の席に座りそこで話を聞いている。
「そうか。まさかとは思ったがのう」
「博士も予想していなかったんだね」
「それはさっき言った通りじゃ」
こう影に言葉を返したのだった。
「今年で二十歳なのはわかっていたがな。誕生日もそろそろじゃと」
「それが今日だったんだ」
「そうじゃな。しかしまさかわしのすぐ側に現われるとはな」
彼はそれが意外で仕方ないといった様子であった。それが言葉にも顔にも出ている。
「わからんものじゃな。こうしたことは」
「とにかくさ、博士」
「天使はすぐ側にいるんだよ」
影達はこのことはかなり強調して博士に言うのだった。
「そのことだけははっきりわかっておかないと」
「そうだよ。それが一番大事なことじゃない」
「それはわかっておる」
博士も彼等の言葉に対して頷いて答えた。
「充分にな」
「それじゃあどうするの?」
「本人はかなりショックを受けているけれど」
「だからといって天使から逃れることはできんよ」
博士は表情はそのままだが達観したような言葉を口に出した。
「それだけはな」
「できないんだ」
「うむ。これだけはどうしようもない」
こうも言うのだった。
「五十年に一度じゃ」
「うん」
「それもう何回も聞いたよ」
「
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