第八話 芳香その十五
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「そう言いたいのね」
「正直に申し上げまして私も勝つと思っていました」
「ナックラ=ビーがなのね」
「倒せはせずとも退けると思っていました」
こう言うのである。
「しかも場所は地下でしたね」
「地下の駐車場よ」
他ならぬこの女が演出した戦いであるからこのことはよく知っていた。言うまでもないことであった。
「そこだったわ」
「つまり大天使の翼は有効には使えなかった」
「ところがそれを上手く使いこなして勝利を収めた」
「はい」
老人はここで頷いてみせた。
「実に見事な戦い方で」
「それは褒めていると受け取っていいのかしら」
「はい、あの髑髏天使を」
包み隠さず言ってのけてみせた老人だった。
「それは否定できないと思いますが」
「確かにね。あれはね」
そして女もそれは否定しないのだった。憮然とすらしていない。
「見事なものだったわ」
「どうやら今までの髑髏天使と比べて強いようですね」
「そうかしら」
「はい。大天使になったのも早かったですしね」
「そうね」
言われてそのことに気付いたような顔になる女だった。
「そういえばそうね。確かに」
「ですからこれは尋常な相手ではないかと」
「それでも。アルラウネよ」
女はここでアルラウネに対する信頼を見せた。
「あのアルラウネよ。そうは簡単にやられないわ」
「左様ですか」
「それよりもよ」
女は話を少し強引に切ったうえで変えてきた。
「問題はよ。私達のことだけれど」
「私達ですか」
「今日本にいるのは二人」
こう老人に告げる。
「残りの同胞達はまだ封印されたままなの?」
「いえ、どうやら違うようですよ」
老人は温厚な声で女に対して答えた。
「それも」
「誰か封印を解かれたのね」
「アメリカです」
老人が出した国はそれであった。
「アメリカで。封印が一つ」
「そう。彼ね」
「はい、彼です」
老人はそう答えるのだった。
「彼が目覚めたようです」
「彼が来てこれで三人ね」
「あと九人ですが」
「九人。全員この時代に封印から解かれるかしら」
「そこまでは何とも」
彼でもわからないのであった。
「申し訳ありませんが」
「そう。わからないのね」
「思えばここに二人いるのです」
「私達が?」
「そう。長い封印が解かれて」
女に対して話す。
「ということは他の同胞達も」
「そうね」
女はこれで彼の言葉に頷いた。
「私達の封印が解かれているということだ」
「必然的に他の同胞達もまた」
「間も無く出て来るわね」
「今度の戦いは面白いものになります」
老人はここまで話して笑った。普段の温厚そうな笑みではなく凄みのある、悪魔めいた笑みだった。温和さはもう何処にも存在していなかった
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