第八話 芳香その十四
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「闘うのならな」
「そう。それじゃあ」
「御前の命は明日までだ」
顔を正面に戻しての言葉であった。
「それは覚えておけ」
「それは貴方だと思うけれど?」
「俺は敗れることはない」
「自信家ということかしら」
「事実を言っているだけだ」
信号が青になった。それを見てサイドカーのアクセルをかける。アルラウネはもう見てはいなかった。
「これから起こる事実をな」
「面白いわね。人間の男も何度も見てきたけれど」
「それで何だ?」
「貴方みたいなのははじめてよ」
笑みを浮かべた言葉であった。
「そういうふうな態度の人間は」
「だからどうしたというのだ?」
「人間というのは面白いわね」
言葉の笑みはそのままであった。
「色々な性格があって」
「それは貴様等も同じだと思うが」
「確かにね。けれど」
「けれど?」
「貴方達はそれ以上よ。貴方が髑髏天使じゃなかったら色々お話したいところね」
「俺から話すことはない」
アクセルがかかり前に進みつつの言葉だった。
「何もな」
「だったら。明日直接聞いてあげるわ」
「明日も同じだ」
また言う牧村だった。
「明日も。俺は何も言わない」
「喋るのは口だけかしら」
「闘いから聞くつもりか」
「その通りよ。それじゃあ」
ここでアルラウネは姿を消した。
「明日。また会いましょう」
「ふん」
こうしてこの場での対面は終わった。牧村はそのまま自宅へと帰る。その夜。誰もいない路地裏において彼等は集まっていた。そしてそこで話をしていた。
光はない。光は遠くから街の灯りが見えるだけだ。その光のない場所で彼等は向かい合い話をしていた。老人が女に対して問うてきていた。
「アルラウネですね」
「そうよ」
女は静かな声で彼の問いに答えた。
「彼女になったわ。行くのは」
「そうですか。それはまた」
「いいと思うけれど?」
老人が何か言いたそうだと見ての言葉だった。
「それとも何かあるのかしら」
「それはないです」
老人は穏やかな声で彼女に答えた。
「アルラウネでいいと思いますよ」
「そう。だったらいいけれど」
「それはそうと」
だがここで彼はまた言うのだった。いつもの温厚な笑みだがそこには独特の凄みも含まれているのがわかる。やはり人間のその笑みとは違っていた。
「一つ気になることがあります」
「気になること?」
「はい。先の戦いです」
彼が言うのはそれだった。
「あの。ナックラ=ビーとの戦いですが」
「あの戦いがどうかしたというの?」
「ナックラ=ビーといえばかなりの実力者でしたね」
「ええ、そうよ」
女は老人の言葉を探りながらもそれを隠しつつ答えた。
「それは貴方も知っている筈よ」
「その通りです。少なく
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