第八話 芳香その十
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「わかった」
「わかってくれたか」
「今はあの連中を避けるとしよう」
「果たして今君に向かって来るかどうかもわからんがな」
「敵は弱いうちに叩く」
一つの定理を述べる牧村だった。
「違うのか」
「本来はそうじゃがな。魔物の考えはわし等と多分に違うところがあるのでな」
「その通りだよ」
「そこはね」
ここで横からまた妖怪達が声をあげてきた。そうして牧村に対して言うのであった。
「僕達は一番大事にするのは楽しみだから」
「だから闘いとなればね」
「楽しみを優先させるのか」
「そういうこと。魔物って強い奴と闘うのが好きだからね」
「何で闘うのが好きなのかは理解できないけれど」
だが楽しみを優先させるというのは理解できるというのだ。この辺りは人ならざる存在としてわかるようだ。妖怪と魔物を分けるものはその考え方だけだからということもあるのだろう。
「まあそれでもね」
「連中の考えはわかるから」
「魔神でも」
「では。今は奴等は俺には向かっては来ない」
「進んで勝ち目のない闘いをすることもないぞ」
また言ってきた博士だった。
「わかったな。それは」
「わかった。それではだ」
博士の言葉に対して頷く牧村だった。
「連中については避けるということだな」
「そうしてくれ。それでじゃ」
「ああ」
「また魔物と闘ったようじゃな」
話はそこに移った。先のナックラ=ビーとの闘いのことだった。このことは妖怪達に話していたがそれが博士の耳にも入ったのである。
「地下の駐車場での闘いじゃったか」
「力の強い相手だった」
ナックラ=ビーのあの怪力を思い出しての言葉だった。
「攻撃を受け続けていれば。俺が負けていた」
「だが君は勝った」
牧村に事実を告げた博士であった。
「そうじゃな」
「ああ」
このことには静かに頷いてみせた。目の光は強いが。
「その通りだ」
「闘いは力や技だけではない」
「素早さだけでもないな」
あの時彼は大天使としての機動力を使って勝った。しかしそれが最大の勝因になったのではなかったのだ。最大の勝因とは何であったか。その話だった。
「あの時は」
「頭じゃよ」
穏やかな笑みを浮かべて言う博士だった。
「それが一番頼りになるものじゃて」
「俺もあの時は考えた」
考え素早く決断を下して闘った結果の勝利なのだ。
「そしてその結果だ」
「それがよかったのじゃ。闘いは気付くことじゃよ」
「気付くことか」
「相手の何かに気付きそこを衝く」
こう言うのである。
「それなのじゃよ」
「俺はそれができているのか」
「聞けばもうできておる」
博士は客観的な様子で述べた。
「既にな」
「だといいのだがな」
「そういうことじゃよ。とにかくじゃ」
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