最終話 日常その十
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「牧村君が作ってくれたね」
「それよね。待ってたのよね」
「そうそう、どんな美味しいんだろうってね」
「それがいよいよね」
「食べられるわね」
二人は笑顔で話すのだった。そうしてだ。
さらにだ。こんな話をするのだった。
「未来のお義兄さんのお菓子ね」
「楽しみにしてるから」
こう話してだった。二人は牧村のザッハトルテを楽しみにしていた。しかしここでだ。
彼はだ。若奈の妹達にこう言うのだった。
「少し待ってくれるか」
「少しって?」
「待ってって?」
「未久も来る」
まずはだ。自分の妹の名前を出すのだった。
「あいつもこの店に来る」
「ああ、未久ちゃんもですね」
「来られるんですね」
「それまで待ってくれ」
こう二人に言うのだった。
「そうしてくれるか。他にも来るしな」
「他のお客さんもですか?」
「来られるんですか」
「多分来る」
そうだというのだ。
「だからそれまでだ」
「誰なんだろ」
「気になるわよね」
牧村の今の言葉にだ。二人は顔を見合わせて話した。
「大勢かな」
「お客さんよね」
「お客さんが一杯来てくれるのは嬉しいけれどね」
「お店にとってはね」
喫茶店の娘としてだ。二人共妥当なことを話した。しかしそれでもだ。それで誰が来るかと言うとだ。そのことはどうしてもわからないのだった。
それでだ。こう話すのだった。
「ううん、怖い人だったらどうしよう」
「あっちの筋の人とかね」
所謂暴力団員の危険も考える。
「最近一目でそれだってわかる人は少ないけれど」
「どうなのかしら」
「目でわかる」
牧村が二人に話した。
「そうした人間はだ」
「目?」
「目なの」
「そうだ、目だ」
そこでだ。わかるというのだ。
「目でわかるものだ」
「目でなの」
「それでわかるの」
「目は全てを語る」
牧村はまた話した。
「その人間の本質を語るのだ」
「それよく言われるわよね」
若奈も彼のその言葉に頷いて言う。
「心が綺麗な人は目も澄んでいるって」
「目の濁っている人間はだ」
「心も濁っているのね」
「そういうことだ」
まさにそうだというのだ。
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