第六十話 最終その十八
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「だからいい」
「まあそれなら仕方ないね。それじゃあね」
子供は牧村の話を受けてからそれを訂正して述べてきた。
「君のそのコーヒーとお菓子。楽しみにしておくよ」
「そうしておけ。是非な」
「ではだ」
ここまで話してだ。死神が言った。
彼はもうハーレーに乗っている。そしてだ。
「帰るとしよう」
「貴様の世界にか」
「そうだ、帰る」
まさにだ。そこにだというのだ。
「そして少し休む」
「それじゃあね」
目玉もここでまた話す。
「コーヒー楽しみにしておくよ」
「そうしておくといい」
「では私達も」
「これでね」
魔神達も別れる。こうしてだった。
牧村は一人になった。それでだ。
彼もヘルメットを被りサイドカーを動かしてだ。この場を去るのだった。
そしてそれからだった。彼はだ。
まずは家に帰った。その彼にだ。まずは母親が声をかけてきた。
「ああ、今帰ったのね」
「只今」
牧村はいつもの調子で帰りの挨拶をした。
「今帰った」
「そう。今日は早いのね」
「早いか」
「まだ五時よ」
こう我が子に話す。
「夕方のね」
「五時か」
牧村はここで家の壁の時計を見た。簡素な丸い時計だ。見れば確かにだ。
今五時になったばかりだ。その時間を見て話す母だった。
「でしょ?また早いわね」
「随分と時間が経ったと思ったが」
「随分って?」
「何でもない」
混沌の中での戦いのことは言わなかった。
「そうか。ここではそれだけなのか」
「こんなに早く帰ってくるんだったらね」
「未久の塾の見送りか」
「何言ってるのよ。あの娘はまだ学校よ」
「部活か」
「そうよ。中学生は忙しいのよ」
大学生よりもだ。我が国の中学生は教育期間において最も忙しいのだ。
「だから。もうちょっとしたらね」
「迎えにだな」
「ちょっと言って来て」
母はこう我が子に話した。
「悪いけれどね」
「わかった。じゃあ行って来る」
「それまではゆっくりしてね」
「紅茶を淹れていいか」
不意に飲みたくなってだ。母に問うた。
「それを淹れて飲んで時間を」
「そうしていいわよ。別にコーヒーでもいいわよ」
「どっちでもか」
「ええ。好きにしなさいそれ位は」
言いながらだ。母はだ。
台所においてだ。野菜を切っていた。その野菜を切りながらこう息子に話す。
「今日の晩御飯は」
「何だ」
「肉じゃがにね」
まずはそれだというのだ。
「もやしと」
「それか」
「それとピーマンと」
見れば切っている野菜はそれだった。緑のピーマンだ。
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