第六十話 最終その十三
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「俺の影だ。そしてだ」
「混沌だというのだな」
「そうだ。俺は混沌だ」
まさにそれだというのだ。それは即ちだった。
「アザトース、その力そのものだ」
「混沌は何だ」
髑髏天使はその闇、混沌を噴き出す影にまた問うた。
「それは何だというのだ」
「混沌はか」
「原初だな」
混沌の者達自身が言うだ。それだというのだ。
「そうだな。原初だな」
「その通りだ。混沌こそが全ての原初なのだ」
まさにその通りだとだ。影も話す。
「それがどうかしたのか」
「貴様は言った」
その影自身の言葉だ。
「有が無に負けることはないと言ったな」
「言った」
影は己の言葉を否定しなかった。少なくとも彼は不誠実ではなかった。何もない混沌の世界にはだ。そもそも誠実というものもない。
誠実がないのならそれを否定するものである不誠実というものもない。何故なら不誠実とはだ。誠実が存在してはじめて成り立つものだからだ。
それでだ。影もそれを言うのだった。
「確かに言った」
「そうだな。貴様は言った」
「それがどうかしたのか」
「貴様は全てを否定したのだ」
何を否定したのか。その話になった。
「貴様の全てをだ」
「俺の全てをだというのか」
「そうだ、貴様の全てをだ」
髑髏天使はその混沌を噴き出し続ける影に話していく。
「貴様自身が否定したのだ」
「混沌は無」
「その無である貴様が有だと言い」
それでだというのだ。
「無を否定したのだ」
「では。俺は」
「貴様他ならぬ貴様自身を否定した」
そのだ。混沌をだというのだ。
「その貴様が勝てる筈がなかったのだ」
「そういうことか」
「混沌は無だ。その混沌が形を造ったその時にだ」
「俺は敗れる運命にあったのか」
「そういうことだ。だが俺は違う」
どう違うか。それは彼自身が言うことだった。
「無にも有にもなれるのだ」
「どちらにもか」
「混沌にこだわることはない」
こうも言うのであった。
「だからこそ。今こうしてだ」
「俺に勝ったか」
「勝った、そしてだ」
どうかというのだ。勝利を収めてだ。
「生き残ったのだ」
「そうだな。生き残ったのは貴様だ」
「そして」
「そして?」
「仲間達もだ」
そうだというのだった。仲間達もだというのだ。
「貴様に勝ったのだ」
「そうだな」
見ればだ。その通りだった。
死神も魔神達もだ。全員だった。
彼等も勝っていたのだ。影に。
その中でだ。死神が言う。やはり鎌を構えてはいない。
ただ右手にだらりと持っただけでだ。消えゆく己の影に告げた。
「若しも貴様がだ」
「私がか」
「無に徹したならだ」
つまりだ。混沌のままならばだというのだ。
「私達は敗れていた
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