第五十七話 挨拶その七
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「特にな」
「そうなの?」
「ただ。今はだ」
「今は?」
「こうしてここにいたい」
そうだとだ。その親子丼を食べながら話すのだった。
「皆で食べたい」
「そんなのいつもじゃないのか?」
「そうよね」
今の彼の言葉にだ。両親はいぶかしみながら話した。
「皆がいる時はな」
「こうして食べてるじゃない」
「それで何でそんなこと言うの?」
未久がここでまた話した。
「訳がわからないけれど」
「今の来期って」
母がそのいぶかしむ顔でまた話した。
「御別れをしてるみたいだけれど」
「そうだな。挨拶をしているみたいだ」
父も言う。自分の妻と同じ顔でだ。
「どうしたんだ?」
「何かあったの?」
「何もない」
ここでも真実を隠して応える彼だった。
「特にな」
「そう。だったらいいけれど」
「それじゃあな」
「ああ。それでだが」
牧村は真実を隠したままだ。さらに話すのだった。
「明日だが」
「明日?」
「明日何かあるのか?」
「明日家に帰れば」
その時はどうするか。彼は両親に話すのだった。
「甘いものが食べたいな」
「ああ、甘いもの」
「それか」
両親は息子の言葉にまずは戸惑いを覚えた。しかしである。
彼のそうした言葉を受けてだ。まずは安心した。
牧村は二人にだ。さらにこんなことを言うのだった。
「何がいいか」
「アイスキャンデーは駄目よ」
未久がすぐに言ってきた。
「それ私のだから」
「アイスキャンデーはか」
「そう、それは私のものよ」
勝手にだ。そうしているのだった。
「一本もあげないから」
「けちな話だな」
「アイスキャンデーだけは駄目」
あくまでだ。こう言う妹だった。
「他にして、他に」
「そうか。それならだ」
「他にしましょう」
両親は娘の言葉を受けてだった。
息子に対してだ。こう言うのであった。
「アイスクリームはどうだ?」
「それならどう?」
また息子に話した。
「御前それ好きだったな」
「だからどうかしら」
「それならだ」
牧村もだ。二人のその言葉を受けてだった。
静かに一言でだ。頷いてみせたのだった。
「それで頼む」
「よし、じゃあ決まりな」
「アイスクリームね」
両親は笑顔で述べた。そのうえでだ。
今度はどのアイスクリームにするか。そのことを話すのだった。
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