双葉時代・発足編<おまけ>
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」
目の前で器用に五尾がずっこけた。
四つ足の獣でも転ける事があるのか。いや、海の上に立っているのだから、どちらかと言えば海面に乗せていた足が水の中に沈んだと称するべきか。
『な、何なのですか、この人間は!? 九尾!』
『諦めろ。この馬鹿者は昔とちっとも変わっとらん、ワシに対しても同じ様な事を言ってのけた大戯けだ』
悲鳴の様な叫びをあげて五尾が九喇嘛を振り返れば、くつくつと笑いながら九喇嘛が嘯く。
信じられない物を見る目で見つめられ、少々居心地が悪い。
「ここに居るのは木遁を使った分身なんだけど、取り敢えず初めまして。オレの名は千手柱間。もし良ければ、名前を教えてくれないだろうか?」
『先程から思っていたのですが……我々に名が有る事を知っている人間は、もうこの世には存在しない……。つまり、九尾があなたに名を教えたのですね』
五尾の言う通りだ。
一年前くらいに、私はぶっきらぼうな口調の九尾から「九喇嘛」という名を教えられた。
九喇嘛にとって、名前はとても大事な物なのだろう。その時の態度でそう感じて以来、私はその名で九喇嘛を呼び続けている。
『人間に自己紹介などをされたのは……初めてです』
「まー、そうだろうね。基本、君達はおっかないし」
普通の人間なら、自己紹介などする前に逃げようとするだろう。
私の場合は、最初の出逢いの段階でそれを逃してしまっただけの事だ。
『成る程……。九尾があなたに名前を呼ぶ事を許したのも分かる気がします』
『こいつが並外れて奇矯な人間なだけだ。他の奴らがこの馬鹿者と同じだとか思うんじゃないぞ』
言われたい放題だな、自分。反論出来ないのが悔しい。
『しかし……。千手柱間の名はあちこちで聞いた事があります。まさか……あなたの様な人だとは思いもしませんでしたが』
「へぇ……。随分とオレも有名になったもんだな」
『ここ最近、目立つ活動を続けているようですね。何のためにです?』
何処か試す様な目に成った尾獣二頭に対して、私は軽く息を吸い込んだ。
どのような答えを出すのかと、期待と同時に恐れを抱いた四つの目に見つめられ、それに恥じる事の無い様に私は宣言した。
「取り敢えず、この忍び世界の無秩序具合を一旦ぶっ壊してやろうと思って。争ってばかりのこの世界を変えてやるんだ」
『――――戯れ言を』
『素直じゃありませんね、九尾は。態度でバレバレですよ』
「うん。九喇嘛がツンデレなのは知ってる」
――そう言って笑った五尾と私に、九尾の尾の一撃が来たのは余談である。
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