第五十六話 使長その三
[8]前話 [2]次話
「ビールでもあるじゃろ」
「ああ、ノンアルコールビール」
「あれと同じなんだ」
「それがブランデーにもあるんだ」
「そうなんだね」
「そうじゃ。それはどうじゃ」
また話す博士だった。
「牧村君はどうじゃ」
「アルコールが入ってなければいい」
牧村はだ。こう話した。
「それならどんなものでもだ」
「よし、じゃあ決まりじゃな」
「そうだ。それならだ」
「うむ、ではアルコールのないブランデーをじゃ」
「わかりました」
ろく子が博士の言葉に応えた。そうしてだ。
そのノンアルコールブランデーをだ。冷蔵庫から出して来たのだ。
そしてそれを牧村に差し出す。それから彼に話した。
「これでいいですね」
「済まないな」
「いいんですよ。お酒が飲めないなら」
「こうしたものをか」
「飲めばいいですから」
「酒を飲めなくても酒の味は楽しめるか」
「凄い世の中になりましたね」
牧村に笑顔で話すろく子だった。
「これも文明の進歩の結果ですね」
「そうだな。酒の味自体を楽しめる」
「牧村さんはお菓子にはお酒を使われるんですか?」
「使いはする」
それはするというのだ。しかしであった。
「だがそうした時はな」
「味は残りますけれどアルコールは消えますね」
「だから平気だ」
結局はだ。アルコールが問題なのだった。
「それでな」
「だからですね」
「その通りだ。だから」
「お菓子に使うのは平気ですね」
「大丈夫だ」
まさにそうだというのである。
「それならだ」
「アルコールですか」
「酒の味自体は大丈夫だ」
それはいいというのだった。
「ジュースの様に飲むことはしないがな」
「成程、体質なのですね」
「飲めない者もおるからのう」
博士もここで話す。
「織田信長もそうじゃったしな」
「そうそう、あの人ね」
「あの人は飲めなかったよね」
ここで妖怪達が楽しそうに話す。
「飲みそうな感じなんだけれどね」
「あれでお酒は全然駄目でね」
「甘いものが好きだったんだよ」
「その通りじゃ。織田信長は酒よりも甘いものじゃった」
博士がこう話すとだ。ろく子が言うのであった。
「牧村さんと同じですね」
「体質がだな」
「流石に性格は違いますが」
その言葉からだ。ろく子もまた織田信長を知っていることが窺えた。だが牧村はこのことについては問わずにだ。話をさらに聞くのだった。
「甘いものがお好きなところといい」
「そうか。しかし」
「しかし?」
「織田信長と酒は合いそうだがな」
「実は違うんですよ、それが」
「意外だな」
牧村は静かに言った。呟く様に。
「そこが」
「わしも最初は少し驚いた」
それは博士もだという。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ