第五十五話 魔水その六
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「牧村君はな」
「そうだよね。戦いにはリズムも必要だし」
「それだったらね」
「音感がないってのはね」
「考えられないよね」
「絶対音感とまではいかなくとも」
流石にだ。そこまではないとしてもというのだ。
「音痴じゃないよね」
「むしろ音感は確かだよね」
「動きだってリズミカルだし」
「そういうのも考えたら」
「だからだ。恥ずかしい」
これが牧村の言葉だった。
「歌うことはだ」
「ああ、それもそうなんだ」
「照れるんだ」
「そういうことだったんだね」
「そうだ。恥ずかしい」
また言う牧村だった。
「そうしたことはな」
「ううん、牧村さんって実はかなりの」
「照れる人だったんだ」
「無愛想じゃなくて」
「そうだったんだね」
「その様じゃな」
博士もここで言う。
「わしも今まで気付かなかった」
「ただの無愛想だって思ってたけれど」
「実は照れてたんだ」
「それが恥ずかしくて」
「それでだったんだ」
「俺もだ」
彼自身もだ。ここで言う。
「それには中々気付かなかった」
「そうだよね。だから言うんだよね」
「気付かなかったことに気付いて」
「それでなんだ」
「だが。気付いた」
それは確かだというのである。
「気付いたらだ。どうするかだ」
「なおすべきじゃな」
博士は言った。
「そうするべきじゃな」
「そうだね。それじゃあね」
「牧村さんはもっと愛想よくね」
「愛想よくしていけばいいよ」
「僕達みたいにね」
「難しいがな」
だが、それはというのだった。
「すぐにはな」
「けれど、少しずつね」
「笑っていってもいいし」
「そうしていってもいいじゃない」
「少しずつね」
「わかった。少しずつやっていこう」
実際にそうすると述べた彼だった。
「これからな」
「じゃあ。話はこれ位にしてね」
「食べよう、苺ね」
「皆でね」
「ミルクあるかな」
ここでだ。ミルクのことも話される。
「ミルクね。あるかな」
「ああ、あるよ」
輪入道にだ。ひょうすべがそれを差し出す。
「どうぞ」
「有り難う。それじゃあ喜んでね」
「使えばいいよ」
「そうするよ」
「はい、苺にはミルクです」
ろく子も笑顔でだ。自分が手にしている皿にミルクをかけてだ。そのうえで言うのだった。
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