第五十五話 魔水その二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「どうじゃ、それは」
「俺は一度はじめたことはだ」
牧村はだ。普段と違い即答せずにだ。言葉を長くして話した。
「降りない主義だ」
「戦うのじゃな」
「そうだ、戦う」
こう答えたのだった。
「最後までな」
「死ぬかも知れんがじゃな」
「関係ない」
こう言った。まただ。
「それはだ」
「そうか。そうするのじゃな」
「そうする。人は何時か必ず死ぬ」
この摂理は絶対のことだった。否定できないものだった。
「だからな」
「そうか。ではわしもじゃ」
「博士もか」
「君と最後まで一緒にいよう」
微笑んでだ。こう牧村に話したのだった。
「戦うことはできんがな。力にならせてもらう」
「済まないな」
それを聞いてだ。牧村は静かに述べた。
「そうしてくれるか」
「当然じゃ。長い付き合いになっておる」
「だからか」
「うむ、それではじゃ」
博士はまた笑顔で牧村に話した。
「わしのできる限りのことをさせてもらおう」
「文献を調べてか」
「それにじゃ」
それに留まらなかった。さらにであった。6
「ここには何時でも来てくれ」
「この部屋にか」
「そして菓子でも茶でも果物でもじゃ」
甘いものが続く。
「好きなものを飲み食いするといい」
「そうしてもいいか」
「どんどんしてくれ。それが君の癒しになる」
戦士の癒しになるというのだ。博士が言うのはこのことだった。
「癒しは。特に君にはじゃ」
「必要か」
「戦いばかりだから魔物になりかけた」
智天使になったその時のことはだ。博士も覚えていた。
「では。それを止める為には人間の生活だったのう」
「そうだったな。あれで俺は人間でいられた」
「今度も同じじゃよ。戦いばかりでは潰れてしまう」
「そしてそれを防ぐ為に」
「癒しじゃ」
博士は微笑みのまま話した。
「だからじゃ。何時でも来てくれ」
「では。有り難くだ」
「わしの言葉受けてくれるか」
「そうさせてもらう」
牧村は壁に背をもたれかけさせたいつもの姿勢で答えた。
そしてそのうえでだ。彼の顔は。
微笑みになった。本当に微かであるがそれになった。
そしてその顔でだ。博士を見て話すのだった。
「すまない」
「あれ、笑った!?」
「牧村さん今笑ったよね」
「うん、笑ったよ」
「確かに笑ったよ」
「本当にね」
それまで沈黙していた周りの妖怪達がだ。彼のその顔に気付いて一斉に言う。彼等もその顔ははじめて見るものだったのだ。
それでだ。彼等はだ。あらためて話すのだった。
「いや、牧村さんの笑顔ってね」
「稀少価値だよな」
「こんなの見られるなんて思わなかったよ」
「全くだよ」
こう話すのだった。喜んでいる様な、それでいて驚いている様
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ