第七話 九階その十五
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「果たして。貴方に」
「今まで生きてきた」
女の今の言葉に特に感情を見せることのない言葉であった。
「だからだ」
「凄い自信ね」
「自信があるといえばある」
このことは否定はしない。
「しかしだ」
「しかし?何かしら」
「俺はただ闘うだけだ。御前達とな」
「そう。それじゃあ」
「行こう」
やはりこれだけだった。
「今からな」
「一つ言っておくけれど」
女はサイドカーの機首をそちらに向けた牧村に対して最後に声をかけてきた。
「今度は。翼は使えないわよ」
「翼はか」
「大天使になっても。限りがあることは覚えておくことね」
「覚えておこう」
こう返しただけでその場所に向かった。ビルの地下に入って行く。そこは地下の駐車場だった。蛍光灯の白く淡い灯りだけで他にはこれといって何もない。左右に車が数台ずつ泊まっている。牧村はその間を進んでいたがやがて彼の前に一人の男が出て来た。
「よお」
モヒカンの如何にもといった感じのパンクの青年だった。黒い皮のジャケットと青いジーンズだ。ジーンズは所々破れているがそれはあえてであるのがわかる。
「髑髏天使さんよお。来てくれたんだな」
「御前か」
牧村は彼の前でサイドカーを止めてそこから降りて話をした。
「御前が今回の俺の相手か」
「そうさ。あの方にここまでエスコートしてもらってな」
「あの方?そうか」
あの方とは誰なのかはすぐにわかった。
「あの女か」
「そうさ。あんた等人間の姿をしてるが人間じゃねえぜ」
「それは承知している」
素っ気無く返しつつ男の顔を見る。細い目が印象的だ。
「しかし。御前のことは知らない」
「俺かい?俺はな」
男はそれに応えにやけながら言ってきた。
「イギリスから来たんだよ」
「イギリスからか」
「そうさ。まあ厳密に言えばスコットランドだけれどな」
見れば目は黒ではなかった。緑だ。緑のその目で語ってきていた。
「そこから来たんだよ。わざわざ」
「今度はスコットランドからか」
「そうさ。ナックラ=ビー」
自分の名前を名乗った。
「それが俺の名前さ」
「ナックラ=ビー」
牧村にとってははじめて聞く名前だった。
「何だそれは」
「まあ詳しく言うとややこしくなるな」
こう言ってそれについては話そうとはしない。
「それにな」
「それに?」
「あんたに言っても意味ないだろ」
今度はこう言うのである。
「別にな。違うかい?」
「それはそうだ。俺にとってもだ」
「闘うだけだろ」
「そうだな」
その男ナックラ=ビーの言葉に応える形になっていた。
「それはな。その通りだ」
「じゃあ早速はじめるかい」
相変わらずニヤニヤしながら牧村に対して言う。
「倒してやるからよ」
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