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髑髏天使
第五十四話 邪炎その六

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「それもう決まってるのよね」
「違うの?」
「お母さんそう言ってたよね」
「そうよね」
 二人もそう思っていた。そしてだった。
 さりげなくだ。その言葉からだ。牧村はとんでもないことを知った。そしてそのことをだ。彼自身も言葉に出して言うのであった。
「しかし」
「しかし?」
「しかしって?」
「今言ったな。ここの奥さんが」
「うん、言ってたよ」
「牧村さんがお姉ちゃんと結婚するってね」
 二人は実にあっけらかんとして牧村に話す。アイスを食べながら。
「それでお店継ぐってね」
「そう言ってたから。笑顔で」
「何時そうなった」
 牧村はこのことにいささか唖然となっていた。
「俺は。この店に」
「そうだよ。嫌なのかい?」
 マスターもだ。彼に笑顔で言った。
「ひょっとして」
「いや、それは」
「いいね。じゃあ大学を卒業したら早速」
「ちょっと待ってよ」
 若奈がだ。マスターがさらに言うのを止めた。
「お父さんも何言ってるのよ」
「おいおい、若奈までそう言うのかい」
「言うとかそういうのじゃなくてよ」
 顔を顰めさせてだ。そのうえでの言葉だった。
「だから。私はね」
「若奈は?」
「そこまでは考えていないから」
 こう父に話すのだった。
「そんな先のことまでは」
「先のことはっていうのか」
「そうよ。そこまではね」
「じゃあ待つか」
 父は一旦退いてみせた。
「その時をな」
「そうよ、待ってて」
 さりげなく否定はしないのであった。若奈自身もだ。
「その時をね」
「そうさせてもらうか。じゃあ牧村君は」
「また俺か」
「暫くは修業だな」
 こう彼に告げるのであった。笑顔でだ。
「このマジックでな」
「お菓子作りに皿洗いにか」
「それも掃除もね」
 それもあるのだった。
「掃除も大事だからね」
「そうそう、お店を持ってるとね」
「どうしても大事になるわよね」
 妹になる予定の二人も言う。見れば見る程その顔は若奈に似ている。声もだ。
「だからお兄ちゃんにはね」
「そっちの修業もね」
「何時の間にか兄か」
 牧村はまた気付いた。
「話が。勝手に動くな」
「気のせいだよ」
「そうよ。それはね」
 二人は牧村に対して楽しげに話す。
「お兄ちゃんになるのはもう決まってたし」
「随分と前にね」
「随分とだと」
 この言葉もだ。牧村には聞き捨てならないものだった。
 それで僅かであるが眉を顰めさせてだ。二人にあらためて問うた。
「となると何時にそうなった」
「ええと、中学の時?」
「そうよね、その頃よね」
 二人は顔を見合わせてそんな話をはじめた。
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