第五十三話 怪地その二十二
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「それはです」
「それは何故だ」
「こうすればいいだけですから」
老人は牧村に右手の平を見せた。するとだ。
そこにだ。宝石が出て来た。赤いルビーであった。
それを牧村に見せてだ。穏やかに笑って述べた。
「この宝石を売ればそれで」
「金はできるか」
「私達は大気から金や宝石を作れますので」
「これも神の力だよ」
子供も明るく笑って言う。
「だからね。お金のことはね」
「何の心配もないか」
「そういうこと。魔物にとってお金なんて何でもないよ」
笑ってまた話す子供だった。
「気にしたこともないし」
「そういうことか」
「おわかり頂けましたか」
老人はあらためて彼に話した。
「そのことは」
「わかった。そういうことか」
「それでは。これで」
老人はまた穏やかな顔で牧村に述べた。
「百貨店で遊んできますので」
「好きにしろ」
牧村は彼等が百貨店で遊ぶことにはこう言うだけだった。特に何も思うことはなかった。それがそのまま言葉になって出ていた。
「楽しんでくるといい」
「はい、それでは」
「じゃあね。またね」
最後に子供が手を振った。そうしてだった。
彼等は百貨店に向かった。そして残ったのは二人だった。
今度は死神がだ。彼に言ってきた。
「ではだ」
「貴様も去るのか」
「私は元の世界に戻る」
「貴様のいるその世界にか」
「そうだ、戻る」
彼の神族のいるその世界にだ。そこに戻るというのだった。
「ではな。またな」
「そうだな。またな」
「その時まで精々生きることだ」
己の前にハーレーを持って来ての言葉だった。ハーレーは己で走って彼の前まで来てだ。そうしてその彼の前で停まったのだった。
「最後までな」
「最後までか」
「混沌を完全に倒すまでだ」
具体的にはそこまでであった。
「いいな、生きろ」
「言われなくともな」
「そうするか」
「死ぬつもりはない」
彼もだ。サイドカーを己の前まで走らせて停めてから述べた。
「戦いが終わってからもだ」
「生きるか」
「だから今死ぬつもりはない」
こう死神に話すのだった。
「決してな」
「ならいいがな」
「さて、闘いが終わりだ」
牧村はここで言葉を変えた。
「落ち着きたくなった」
「では店に戻るか」
「いや、家に帰る」
そうするというのであった。
「家に帰りそうしてだ」
「そこで落ち着くか」
「そうする。アイスでも食べてな」
「ならそうするといい」
死神はヘルメットを被った。バイクに乗る時のそのヘルメットをだ。
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