第五十三話 怪地その十五
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「だが。そろそろだ」
「姿を出されますか」
「そうするんだね」
「そうさせてもらう」
こう老人と子供にも述べた声だった。
「それではだ」
「はい、それではです」
「そろそろ出てくれるかな」
声と共にだ。そうして。
やはり巨大な姿だった。色は漆黒だ。
大きな腹にヒキガエルを思わせる顔、青黒い舌を持ち細い目をしている。短く柔らかい毛が全身に生えている。蝙蝠でありながらナマケモノでもある、その相反する二つの動物を同時に印象付けさせる姿をしている。
その姿で出て来てだ。牧村達に言うのであった。
「我がその神だ」
「ツァトゥヴァ」
「混沌の大地の神だな」
「そうだ」
こう牧村と死神の言葉に答えた。その横に広い、異様なまでにそうなっている口でだ。見ればその口には歯が一本も生えていない。
その口でだ。神は答えたのだった。
「我がその大地の神だ」
「そういうことだ。名乗りは終わったな」
男が言ってきた。
「これでいいな」
「はい」
老人が男の言葉に応えた。
「よくわかりました」
「そういうことだ。それではだ」
「戦いですね」
「風を倒したことは認める」
男はだ。神を背にしながら老人達に述べた。
「そのことはな。しかしだ」
「しかしか」
「それでもだっていうのね」
「それならば」
「そうだ。この神は倒せるか」
こう魔神達に返すのだった。
「風と強さは同じだが性質は違う」
「その性質だ」
神もまた自ら言ってみせた。
「それが違えばだ。力が同じ強さであってもだ」
「容易には倒せない」
「そういうことか、つまりは」
「そうなのだな」
「そうだ」
その通りだとだ。神は魔神達に対してまた述べた。
「それはわかっておくことだ」
「性質が違うことはわかったよ」
「それについては」
魔神達はそう言われてもだ。まだ落ち着いていた。
そしてその落ち着きのままだ。彼等はさらに言った。
「わかったから。じゃあ」
「はじめるとしよう」
「早速な」
「気が早いものだな」
神は彼等のその言葉を聞いてだ。その顔も見下ろしたうえで今の言葉を発した。
「こちらの世界の住人達は」
「それはわかっておくことだ」
男も神に対して述べる。
「よくな」
「それが戦いにも関係するか」
「ないと言えば嘘になる」
そうだというのであった。
「それはな」
「そうか。嘘になるか」
「そういうことだ。では私はだ」
男の前に巨大な黒い渦が現れた。それは自分から男に向かってだ。彼をその中に覆い隠してしまたのである。
そうして姿を消したうえでだ。今度は彼が声だけになっていである。男、そして牧村達に対してだ。こんなことを言ってきたのだった。
「まず魔神達に言おう」
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