第五十三話 怪地その三
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「魔神達はあれやこれやと人間の世界で遊んでおったからのう」
「そこでか」
「戦い以外の楽しみを知ったのじゃな」
博士は言った。
「その結果じゃ」
「そしてああなったのか」
「そうじゃ。おそらくはそうじゃ」
そしてだ。博士はこんなことも話した。
「魔物が戦いのこと以外の楽しみも知ればじゃ」
「それでどうなる」
「妖怪と変わらぬ」
そうだというのである。
「それではじゃ」
「同じになるか」
「魔物は戦いを楽しむ妖怪じゃ」
博士はここでは簡単に述べた。
「そして妖怪は戦い以外のものを楽しむ妖怪じゃ」
「そう、遊びに食べることをね」
「それが妖怪なんだよ」
「つまりはね」
その妖怪達の言葉である。
「遊びを知った魔物ってね」
「思い出したって言ってもいいかな」
「かもね」
彼等の間でこんな話もした。
「それってもうね」
「妖怪とあまり変わらないよね」
「戦いが好きでもね」
「それじゃあね」
「そうじゃな。その通りじゃ」
博士も彼等のその言葉に頷く。そうして述べた。
「それでは変わらぬ」
「だよねえ」
「魔神達も元々妖怪だし」
「最初に生まれたね」
「妖怪の古株でね」
「古株か」
牧村は彼等のその言葉に反応した。そのうえで彼等に問うた。
「あの連中は古い妖怪達なのか」
「そうじゃよ」
天狗が出て来て彼に答える。赤ら顔に白い髪と髭、そして高い鼻が何よりもだ。彼が天狗であるということを知らしめていた。
「わしと同じじゃ」
「天狗か」
「わしは長老になるかのう」
「いやいや、わしもじゃぞ」
「わしもじゃ」
ここで子泣き爺と砂かけ婆も出て来た。
「かなり長生きしておるからのう」
「本当の歳がわからん位にじゃ」
「そこまでか」
「そうじゃ、古いぞ」
「百目達と一緒におったからのう」
彼等は牧村にも答えた。
「あ奴が子供の頃はよく一緒に遊んだものじゃ」
「そうじゃったな」
「わし等も子供だったしのう」
「そうだったのう」
「あのさ」
ひょうすべがその彼等に問うた。
「それってどれ位前なの?」
「さて。だからわし等歳はわからんのじゃ」
「長生きしておるからのう」
ひょうすべにもだ。子泣き爺と砂かけ婆は答えた。
「果たしてどの程か」
「さてさて」
「確かじゃ」
二人の代わりにだ。博士がこう述べた。
「九尾の狐じゃがな」
「あの女か」
「あれは中国の殷の頃にはもうおった」
およそ三千年前である。
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