第五十二話 死風その十六
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「大きかったら。見えちゃうから」
「下着がか」
「横からね。そうなったら駄目だから」
「そうだな。それはな」
「かといって小さくとも」
その場合についても言う彼女だった。
「はみ出るし」
「半ズボンでもか」
「そうよ。うっかりしていたらね」
「ブルマーみたいだな、それは」
「ブルマー?何それ」
しかしだった。未久はブルマーと聞いてきょとんとした顔になるのだった。そうしてそのうえでこう兄に言葉を返すのだった。
「ウルトラマンか何かの怪獣?」
「何故そうなる」
「だって。聞いたことない言葉だから」
だからだというのである。
「何、それ」
「昔はそんな服があったらしい」
実は牧村もブルマーの実物は知らない。彼が小学校の頃にはもうなくなっていたのだ。当然中学や高校でもそれは同じである。
「下着みたいな形でだ」
「下着みたいなの」
「それで下に穿く」
「何かそれっていやらしそうね」
「そんな服が昔は女子の体操服だったらしい」
「何、それ」
未久はその説明を受けてすぐに顔を顰めさせて問うてきた。
「それって水着とかレオタードで体育してるようなものじゃない」
「そうだな。確かにな」
「そんなの恥ずかしくてとてもできないわよ」
口を尖らせてだ。こう言うのであった。
「半ズボンでも足丸見えで結構恥ずかしいのに」
「半ズボンでも駄目か」
「やっぱりジャージよ」
それだというのである。
「ジャージだと見えないからね」
「それでか」
「そうよ。けれどうちの学校それは駄目だから」
この辺りが難しいところである。これは学校の考えによる。
「いつもこうしてね。半ズボンじゃないとってね」
「寒さや暑さになれる為か」
「夏はいいけれど」
未久は困った顔になって話す。
「けれど冬はやっぱり」
「寒いな」
「神戸って。風も強いし」
海と山の間にあるからだ。それは当然のことだった。
「冬は厳しいわよね」
「だからだな」
「しかも女の子は冷えるのよ」
未久は困った顔で話していく。
「それなのに半ズボンって」
「まあそれは仕方ないな」
「仕方ないっていうの?」
「それも鍛えるうちだ」
それでだというのだ。兄はここでは校則を話には出さなかった。
「寒さに慣れることもだ」
「慣れるの?寒さって」
「暑さもそうだがな」
「あれ?心頭滅却すればっていうの」
未久はここでこのことを言った。古い言葉である。
「それだっていうの?」
「そういうことになるか」
「精神論なのね。それって」
それをわかってだ。未久は少し憮然としてから兄に述べた。
「お兄ちゃんらしくないわね」
「そうか」
「うん、何かね」
こう兄に言うのである。
「そういうのって」
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