第五十二話 死風その十三
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「後は三つ」
「それだけだな」
「わかっておられると思いますが」
ここでだ。老人はその牧村と死神に話すのだった。
「それで終わりではありません」
「四柱の神々を倒した後でか」
「そのうえでだな」
「はい、混沌の中枢です」
そこだというのである。
「そこにいる神々との戦いがあります」
「あの男もいるな」
「そうだな」
牧村と死神は顔を見合わせてまた話した。
「あの黒い男もまた」
「その混沌の中枢に」
「はい、勿論です」
その通りだとだ。老人は答えた。
「彼もまたいます」
「ナイアーラトホテップだったね」
子供はその名前を言ってみせた。
「そんな名前だったよね」
「そういえばそんな名前だったな」
牧村は子供の問いにこう答えた。
「確かな」
「実際に戦ったことはないけれど」
それでもだとだ。子供は彼と死神に言うのだった。
「強いよ、あれ」
「それはわかっている」
「だから。ただの強さじゃないよ」
こう言うのである。
「尋常なものじゃないから」
「先程の風の神よりもです」
老人も言う。
「ハストゥールといったあの神よりもです」
「まださらにか」
「はい、遥かにです」
そこまで強いというのである。
「あの神はです」
「混沌を呼び出す者か」
「人間の政治の世界で言うなら。この時代では」
老人は現在の人間の世界、それも日本のそれに当てはめて言うのだった。
「あれです。首相です」
「今の首相なら何の役にも立たないがな」
牧村はここで額に黒子の様なものがある学生運動あがりの首相のことを述べた。彼はその首相は全く評価していないのである。
「あの男は存在自体が邪魔だ」
「いえ、地位としてです」
「そちらか」
「はい、そちらで考えるとです」
それだというのである。
「あの神は混沌の世界の首相です」
「俺達が今倒した神は。それでは」
「閣僚といったところですね」
首相よりは格が落ちる。そうした意味での言葉だった。
「それですね」
「そうしたところか」
「ですからかなりです」
老人の言葉は続く。
「強いです」
「魔神よりもか」
「私達全員と貴方達二人でようやくでしたね」
今度は先程の戦いについてのことであった。
「そうでしたね」
「その通りだ」
「それよりもまだ強いのです」
「なら。それだけにか」
「御用心を」
老人の今の言葉は真剣なものだった。
「無論私達もそうしなければなりませんが」
「勝ち残り生き残る為にだな」
「死なれるおつもりならいいです」
老人はその場合は構わないという。無論本心からの言葉ではない。
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