第五十二話 死風その六
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「遠慮なくな」
「そうさせてもらう。それではだ」
「その神は何処だ」
死神の言葉だ。その左肩の上に目玉がいる。
「ここにいるのだな」
「今ここにいる」
男は死神の問いにこう返してきた。
「ここにだ」
「ここにだと」
「いるんだって?」
「そうだ、いる」
こう死神と目玉に答える男だった。
「既にな」
「ということはだ」
「そうだね」
二人は彼の言葉からだ。すぐに悟ったのだった。
「風だからか」
「もうここに」
「そうだ。わかったのだな」
男もまたそうだというのだった。
「それが」
「わかった。そしてだ」
「はじめるんだね」
「その通りだ。ではだ」
男はだ。風に語り掛けた。するとであった。
風が形になっていく。それは不気味な、黒と言うべきかそれとも白と言うべきかすらわからない、全く異なる属性の色が異様に絡み合った色をしたオオトカゲであった。
だが普通の蜥蜴ではない。その身体には無数に蠢く触手が生え鱗の代わりに身体を覆っている。その異形の姿が出て来たのである。
男は自身の後ろに出て来たそれに顔を向けてだ。こう声をかけた。
「そろそろはじめていいな」
「うむ」
何かが違う、風を切る様な声であった。人の声ではなかった。
その声でだ。巨大な禍々しい蜥蜴が言ってきたのである。
「楽しませてもらおう」
「そうするといい。それではだ」
「ではナイアーラトホテップよ」
蜥蜴は男の名を呼んでみせた。
「このハストゥールの戦いを見ているのだ」
「そうさせてもらう。それではな」
「今よりだ。この者達を滅ぼす」
「そして混沌の世界を」
「この世界に表すとしよう」
こう話してであった。男はだ。
右手を掲げそこから闇を出しだ。その中に消えるのであった。
だが声だけは聞こえる。彼はこう牧村達に言うのであった。
「でははじめるのだ」
「そうさせてもらう」
牧村が彼に応えた。
「今からな」
「私もだ」
「僕もだね」
死神と目玉も応えた。
「その風の神とだ」
「これからね」
「四つの元素の一つ」
牧村はその神の禍々しいものを見ながら語った。
「それがこの禍々しい蜥蜴か」
「そうだ。先にも言ったな」
こうだ。神からも言ってきた。
「我が名はハストゥール」
「そうか。それではだな」
「今から貴様を倒す」
「神を倒すか」
神はまた二人に言う。
「そう言うのだな」
「そうだ、必ずだ」
「ここで倒す」
牧村と死神がそれぞれ神に告げる。
「例え何があろうとも」
「絶対にだ」
「面白いことを言うな。人間や我等と違う神は」
こうだ。二人に言う神だった。
「我を倒すというのか」
「それが面白いか」
「貴様自身が倒されるとい
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