第五十二話 死風その五
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「本気だよ」
「ではだ」
「うん、行こう」
目玉の声は明るい。何処までもだ。
「それじゃあね」
「ではな」
こうしてだ。彼等は戦いに向かうのであった。そうしてだ。
あの男がだ。彼等のところに来て言うのであった。
「集まっているな」
「来たか」
「待っていた」
牧村と死神がそれぞれ男に告げる。
「その風の神とか」
「戦いだな」
「そうだ。そしてだ」
どうかとだ。さらに話す男であった。
「貴様等の最後の時だ」
「そう言うと思っていた」
牧村が返した。
「やはりそう言うか」
「そうだ。我等混沌の神々の中でも高位にある」
男はだ。声にその不敵な笑みを含ませていた。
そしてその不敵な笑みでだ。彼等に告げるのだった。
「これまでの妖魔や神とは違う」
「その全てがだな」
「如何にも」
男は死神の言葉にも応えた。
「何があろうともだ。貴様等は勝てはしない」
「言うねえ」
ここで言ったのは目玉だった。
「いや、本当にね」
「確信しているから言えることだ」
「確信してるんだね」
「今度の神には勝てはしない」
男はその確信を言葉に出してみせた。
「あまりにも強いからだ」
「その確信は確信ではない」
だが、だった。牧村はこう言ってだ。男のその言葉を否定するのだった。
「俺達は勝てる可能性は皆無ではない」
「そう思っているのだな」
「僅かな可能性でもそれは確実なものにできる」
これが牧村の言葉だった。
「それを言っておく」
「ではそう思っていることだな」
男の言葉の調子は変わらない。あくまでだった。
「そしてそのうえでだ」
「死ねというのだな」
「その通りだ。では行くとしよう」
男の後ろから。世界が変わった。
今度は無色の世界だった。色は何もない。
白でも黒でもない。そのどちらでもない、かといって灰色でもない色が漂っている。その無色の世界には風が様々な方角から吹き荒れている。
その中にだ。牧村達も何時しかいた。牧村は周りを見回してから言った。
「風か」
「風の神の世界だ」
また男が言ってきた。
「それがこの世界だ」
「そしてこの世界でだな」
「貴様等は死ぬのだ」
告げる言葉は同じであった。
「そうなるのだ」
「何度も言うがな」
そしてだ。牧村の言葉も同じであった。
「そうはならない」
「ではそれを見せてもらおうか」
「思う存分見るのだな」
鋭い目を男に向けて告げた。
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