第五十二話 死風その二
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「あの四柱の神々じゃが」
「あの連中だな」
「やはり。これまでの敵とは違う」
「強いか」
「強いというものではない」
そうした言葉では言い表せないというのだ。
「その物質の力そのものじゃ」
「水や火のか」
「そうじゃ。そのクトゥルフじゃが」
語るのはこの神についてだった。
「水を司るな」
「そうらしいな」
「力はその水そのものじゃ」
こう牧村に話すのだった。
「この世にあるな」
「水か」
「水の力は言うまでもないな」
「それはわかる」
それを聞いてだ。牧村も頷いた。
「水は万物を支配すると言っていい」
「その水の力なのじゃよ」
「それがその神か」
「クトゥルフじゃ」
博士は言った。
「そして他の神々もじゃ」
「火、風、地のか」
「それぞれの力なのじゃよ」
「それが俺のこれからの相手か」
牧村は壁に背をもたれかけさせたまま腕を組んでいた。そのうえで言うのであった。
「この世の摂理とか」
「勝てる可能性は極めて少ないぞ」
「だが零ではないな」
「君がそう思っているならばな」
「ならいい」
それをだ。彼の答えとしたのだった。
「言ったな。零ではないのなら」
「それを百にするのじゃな」
「そうする。俺は嘘は言わない」
断言だった。彼のだ。
「絶対にだ」
「そうじゃな。ではまたここに来てくれ」
「そうさせてもらう」
「とびきりの菓子を用意しておくからのう」
「菓子か」
「ケーキじゃよ」
博士は笑顔で彼に話した。
「オーストリアから特別に注文したものじゃ」
「ザッハトルテか」
オーストリアと聞いてだ。牧村はすぐに察した。
「それだな」
「左様、それじゃ」
まさにそのザッハトルテというのである。
「それを用意しておくからのう」
「有り難いな。それではだ」
「待っておるからな」
暖かい言葉だった。真剣な暖かさであった。
「次にここに来ることをな」
「是非な。そうしておいてくれ」
「絶対だよ」
「約束だからね」
妖怪達も彼に声をかけてくる。それまでは二人の話を黙って聞いていた。だがそれが一段落したと見てだ。彼等もそうしてきたのである。
「だからね」
「ザッハトルテを皆でね」
「食べようね」
「ザッハトルテは好きだ」
牧村はまた答えた。
「そういうことだ」
「うん、じゃあね」
「皆でザッハトルテ食べよう」
「一杯注文したから」
「もう飽きる位にね」
妖怪達はその量についても話した。
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